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2017年1発目のうみラボ&調べラボ結果 – いわき海洋調べ隊「うみラボ」公式サイト
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2017年1発目のうみラボ&調べラボ結果

みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松です。うみラボを始めてからというもの、魚を食う機会が増えました。今ではすっかり魚をさばけるようになり、魚屋でうまい魚を見つけたり、釣り人の知人からお裾分けをもらったときは、おいしい刺身をこさえて酒を楽しんでおります。うみラボとは「地元の魚をおいしく食べるための会」だったのかもしれません。

 

さて、2017年も調査がスタートしました。うみラボ海洋調査(通算23回目)は4月2日に、そこで釣った魚を調べる「調べラボ(こちらも通算23回目)」が4月16日にそれぞれ行われております。というわけで結果をこちらに掲載しときますね。福島の海、どんどん状況が変わってきています。アップデートにお役立て下さい。

 

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今回も1.5km沖で調査開始。一般社団法人AFWの吉川さんから廃炉に関するレクチャーを受けます。

 

アクアマリンふくしまの富原獣医のもと海底土を採取。

アクアマリンふくしまの富原獣医のもと海底土を採取。

 

いつもは2キロ〜3キロ沖の、比較的浅場でも釣りをするんですが、この日は前日までの雨や海水温の影響もあり、まったく釣れず。うみラボには珍しく「浅場ボウズ」という結果になりました。ここのところ「釣りしてえ」という参加者が増えているので、すごくすごく申し訳ないのですが、まあ自然が相手だし、しゃーないっすね。

 

気持ちを入れ替えて10km沖に移動すると、爆釣スイッチがオン。以下、写真とキャプションでその爆釣の模様を振り返って参ります。

 

うみラボ公認「マダコ大使」のH本女史が快調にオキメバルをゲット。

うみラボ公認「マダコ大使」のH本女史が快調にオキメバルをゲット。

 

毎回レクチャー頂くAFWの吉川さんも序盤からなかなか快調。

毎回レクチャー頂くAFWの吉川さんも序盤からなかなか快調。

 

普段から釣りをされるというM日新聞のS本記者もシロメバルをゲット。

普段から釣りをされるというM日新聞のI上記者もシロメバルをゲット。

 

雑誌編集者のH寺岡さんも大きなソイを釣り上げました。すばらしい大きさ!

雑誌編集者のH寺岡さんも大モノゲット。すばらしい大きさのマゾイ!

 

沖縄から参加してしてくれたN島さんも小ぶりですがヒラメをゲット。刺身がうまそうな大きさです。

沖縄から参加してしてくれたN島さんも小ぶりですがヒラメをゲット。刺身がうまそうな大きさです。

 

超大型のクロソイ。

超大型のクロソイ。この海域の豊かさを垣間みる瞬間でありました。

 

いわき出身のHぐちさんもウスメバルをゲット。刺身がうまいんだよなあ。

いわき出身のHぐちさんもウスメバルをゲット。刺身がうまいんだよなあ。

 

雑誌の取材でいらっしゃったライターさんにも問答無用で釣って頂いております。

雑誌の取材でいらっしゃったライターさんにも問答無用で釣って頂いております。

 

うみラボ首席けんきゅう員のPIPPO八木隊員もささがのアイナメゲット。

うみラボ首席けんきゅう員のP八木隊員もささがのアイナメゲット。

 

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とまあそんなわけで終わってみれば、このように爆釣となりました。アイナメ、シロメバル、キツネメバル、ウスメバル、クロソイなど、この海域でよく釣れる定番魚がばっちり釣れました。しかもどれも大きさも見た目もいいですねー。この海域で大きく育ってきた魚です。これを食わずに「計測に回す」というのは、彼ら魚たちにとっても不本意だろうと思うし、ぼくらも不本意ですが、福島の海を知り、そして伝えんがために犠牲になってもらった魚です。ほんとうはみんなおいしく食べたいんだけど・・・。

 

だからこそ、ちゃんと測って計測。

 

というわけでここからは「調べラボ」(4月16日開催)の結果です。今回は水族館の独自企画「ハッピーオーシャンズサミット」の1プログラムとして開催されました。いつもはセミナー室でやるんですけど、今回は仰々しい感じで調べラボが行われました。いつもは計測より試食に注目が集まりますが、今回は富原獣医の講演にも多くの方が聞き入っていました。素晴らしいですね。

 

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富原獣医による講演。「本来の意味でのサイエンスカフェが必要」!!

 

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背後に本棚があると一気に「サイエンス感」が高まる!

 

今回計測したのが、要するに4月2日のうみラボで釣った魚、ということですね。

今回計測したのが、要するに4月2日のうみラボで釣った魚、ということですね。

 

試食ブースでは「カナガシラ」料理が振る舞われました!

試食ブースでは「カナガシラ」料理が振る舞われました!

 

これがカナガシラ。うまいのに値段がつかない、要するに「雑魚」扱いされてしまう。地位向上させたいですね!

これがカナガシラ。うまいのに値段がつかない、要するに「雑魚」扱いされてしまう。地位向上させたいですね!

 

今回振る舞われたのが、カナガシラのうしお汁(左)と、カナガシラのフライ(右)。淡白な白身が最高。

今回振る舞われたのが、カナガシラのうしお汁(左)と、カナガシラのフライ(右)。淡白な白身が最高。

 

というわけで、いつにも増して充実した内容だった今回の調べラボ。多くの方に関心を持って参加頂けて光栄です。試食のほうも盛況だったようで、いわきのカナガシラのうまさが伝わったのではないかと思います。まだまだ価値が認められていない魚なので、こうして下から突き上げるようにカナガシラのうまさが認知されれば、扱ってくれる業者さんも増えて経済的な価値も生まれてくるかなと思います。続けたいですね。

 

さて、長くなる前に、計測結果をお知らせしておきます。下の表の画像をクリックするとPDFファイルが開いて、調査結果のもとの生資料がご覧頂けます。気になる人はクリックを。

 

スクリーンショット(2017-04-26 12.45.58)

 

今回の計測結果、なんと、海底土を除く全検体がN.D.でした。採取場所が10km沖ということで、まあ毎回低いんですけれども、試験操業の対象になっていないキツネメバルすらこの結果ということですので、もうほとんど汚染された魚は見つかっていないという福島県や漁協の調査結果とも重なってきます。もちろん今後もモニタリング必須ですが、現状はこういう感じだということですね。

 

注目はまずはシロメバル。富原獣医に耳石を鑑定して頂いたところ12歳〜9歳。つまりすべて震災前生まれです。これがN.D.です。富原先生からもも「原発近傍の海域の事故前生まれのシロメバルがN.D.になってきたというのは今までなかったことなので、6年という歳月が感じ取れる結果となっていますね」とコメントを頂いております。

 

さらにキツネメバル。富原先生のコメント以下の通りです。キツネメバルはあまり移動しない魚です。10km沖のキツネメバルの高齢魚がN.D.となったということは、その周辺海域のキツネメバルの多くがN.D.となるのではないでしょうか。今年度のうみラボの調査で検出される魚は2km沖のシロメバル、キツネメバル、小型のアイナメ、サメ類ぐらいに限定されてきそうですね。

 

どうでしょうか。線量、かなり下がってきましたね。ここまで下がると「福島の魚は汚染されている」というのは当てはまらなくなってきているのがわかると思います。出荷規制がかかっている魚種で、原発沖10kmのところで漁獲され、しかも「震災前生まれ」でこのデータですからね。

 

試験操業の対象になるには「出荷規制」が解除されないといけないんですが、これが解除されるための条件がかなり厳しい。国の規制値を超えた魚がいたとすると、その魚種の規制が解除されるには、その超えちゃった魚が獲れた地点で獲れた魚の線量が、長期に渡り不検出とならないといけないんです。つまり、そこに魚がいないといけない。しかも長期的に。これが厳しい。魚だって多少移動するんで。

 

国はおろか漁協の基準値(50Bq/kg)すら大きく下回っているのに、①同じ地点で漁獲できない、②N.Dじゃなくて数ベクレル検出されちゃう、この2つがクリアできずに、ずーっと「国の出荷規制がかかっている」という状態になってしまう。この「国の出荷規制がかかっている魚種がいる」状態が、「福島の魚はまだ心配」というイメージを固定化させる遠因になっている。というわけです。

 

もちろんルールなので仕方ないですし、検出はされているので今後もさらにモニタリングを継続する必要がありますが、「汚染された魚を流通させないための規制」が足かせとなって福島の漁業の再開を阻んでいるとも考えられるので、すこし複雑な気もします。少なくとも、出荷規制のかかっている魚は「ほとんど移動しない魚」ですし、いわき沖や相馬沖といった原発から離れた海域では、メバル類の規制を解除しても問題ないのではないかと小松けんきゅう員的には考えています。

 

逆に言うと、すげー厳しいってことなんです。これだけ厳しい基準が設けられてるのは、福島の漁業だけ。しかも、資源は回復し、魚体も大きくなっている。潮目の海なのでもともと品質は高い。これで、資源がばっちり管理されれば、福島の漁業は復興どころか超活性化しちゃうんじゃないかと思いますが、ううむ、ルールはルール。これからも地道に調査を続けるしかなさそうです。

 

 

小松けんきゅう員
小松けんきゅう員

うみラボけんきゅう員。釣るよりも食べるほうの専門。