2017年5月のうみラボ&調べラボ結果!
みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松です。もう6月になっちまいました。遅ればせながら5月の海洋調査の結果をお知らせします。今回のみどころは、①「10歳超えのメバルからどのくらい出るか」、②「マダコ大使まさかの“ヤマノカミ”釣り」、以上2点です。なんのことでしょうか。詳しくは本文を。
24回目のうみラボ。5月7日に開催されました。いつも通り、久之浜港を出発して、広野町、楢葉町、富岡町と通過しつつの福島第一原発という工程です。到着しますと、いつも通り、一般社団法人AFWの吉川さんから廃炉についてのレクチャーを頂きます。今回から資料がかなり見やすくなりまして、かなり精度の高いレクチャーを受けることができます。吉川さんありがとうございます。
楽しく調べるだけがうみラボではありません。割と真面目に調査をしております。見て下さいこの皆さんの真剣な表情。吉川さんは普段から廃炉についての情報発信にあたっている方。海からこうして確認できるのは、うみラボだけです。魚釣りも楽しいですが、認識のアップデートのためにひあ、こうして学ぶことも大事ですね。
今回の釣りでは、大きな奇跡が起きました。以前のうみラボで、うみラボでは珍しい「マダコ」を釣り上げ、「うみラボ公認マダコ大使」の異名をとるH本さんが、見たこともない魚をゲット!!
なんだこのとげとげの魚!!!
富原獣医に確認したところ、これは「ケムシカジカ」という魚とのこと。H本女史、またもや珍種の魚を釣り上げました。ちなみにこのケムシカジカ、いわき市久之浜では「ヤマノカミ」と呼ばれているそうです。煮てくうとうまいとか。わたしは食べたことありませんが、H本さん、すごいなあ、またこういう珍しいのとを釣るとは・・・。富原獣医からも「水族館で展示したい」とのこと。これが実現したら、ハンパないです。
全体の釣果もよかったです。もっと釣ることもできましたが、検体として充分であれば、資源の無駄になってしまいますので、うみラボではそれ以上は釣りません。やはり釣り人はクーラーボックスいっぱいに釣りたいというのが本音だと思いますが、せっかくここまで大きく育った宝物を根こそぎ獲るようなことは、やはり考えねばなりません。うみラボは今後も「持続可能な釣り調査」を模索します。
というわけでですね、基本的に、やってることはこの数年変わっておりません。釣りをして、測る。それだけです。しかしなんというか分かってくること、感じられることというのは年々変わってるので、日々問題意識は更新されていますが、ここしばらく変わらないのは、やはり「魚は釣らなければ増える」ということ。一方で、釣りをしていれば「釣らずにはいられない」ということ。ここをどうバランスを取るか。せっかく回復してきた漁業資源ですから、なんとか次の世代にも引き継げればと思って活動しています。
さて、続いては計測の結果です。5月21日に開催された「調べラボ24」の模様を紹介していきます。
それでは、計測結果をご覧頂きます。(下の表の画像をクリックするとさらに詳しいPDFファイルが開きます)
※一番下のアイナメの番号が「10」になっていますが正しくは「11」です。すんません。
前回に引き続き「オールND」でした。2017年度の調査、これで2回連続での「オールND」です。まあ10kmがメインなのでそりゃあそうだっぺなあと想像はつくのですが、今回は検体No.9のシロメバルですね、3検体を同時に測っており、11歳、12歳、13歳という個体でした。震災前生まれですし、年齢も高いので、高濃度汚染水の影響をガチで受けた個体と考えられますが、まさかのNDでした。これは非常に興味深いですね。
これまでのうみラボ調査では、高齢のメバルは、①震災前生まれの個体は汚染水の影響をまともに受けた、②高齢だと代謝の力も弱まってるので排出が遅い、③したがって比較的高い線量が記録されることが多い、という認識でした。しかし今回の結果、これも考えを改めないといけないかもしれません。検体No.7のキツネメバルにも9歳の個体が入っていましたが、こちらもNDであることを考えると、結論としては「高齢のメバルすら排出が進み不検出の個体が増えてきた」ということが言えるのではないかと思います。
さらに検討すべきことがもう1つ。検体No.10のアイナメです。2〜4歳と、こちらは比較的若いですね。何度も紹介していますが、①アイナメという魚は「若いときには沿岸に生息する」という性質があります。沿岸ですから、②この海域の若いアイナメは「漏れ出ている汚染水の影響を受けやすい」ということになります。したがって③「若いアイナメからは放射性物質が検出しやすい」という傾向がありました。しかし、今回の結果はND。つまり、沿岸部の海水の線量がさがってきた。東電の汚染水対策が効いているかもしれない。ということが推察されます。
まとめましょう。
今回のデータから分かること。
①老齢のメバルすら不検出。
②若いアイナメすら不検出。
③原発事故から6年以上経ち、排出がさらに進んだ。
④おそらく汚染水対策も効果を出している。
⑤以上のような理由から、原発沖の魚も「汚染されている」という表現は難しくなった。
ということかなと思います。アクアマリンふくしまの富原獣医からも「今回は海底土も低かったので、凍土壁などの汚染水対策が効いてきているのでしょう」とのコメントを頂いています。
そして、H本さんの釣り上げたケムシカジカ aka ヤマノカミですが、なんと展示されてましたぁぁぁ!
原発沖で魚を釣り、線量を測って公表するばかりか、珍しい魚を釣り、水族館の展示に貢献してしまうとは。うみラボ、我ながらヤバい団体になりつつあるようです。釣り上げたH本さんに最敬礼すると同時に、いやあ、福島の海、魅力がまだまだ詰まっていそうですね。まだ生きてると思いますので、アクアマリンでケムシカジカを見つけたら、うみラボが釣ったやつだぜと自慢して下さいませ。
では、また次回。