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第19〜22回調べラボまとめ – いわき海洋調べ隊「うみラボ」公式サイト
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第19〜22回調べラボまとめ

うみラボけんきゅう員の小松です。ご無沙汰をしております。ようやく確定申告による燃え尽き症候群が収束し、やる気が出てきましたのでこちらも書きます。冬期はうみラボは休みでしたが、調べラボは毎月第3日曜日に開催し続けておりました。日程と試食は次の通りです。

 

2016年12月18日 第19回 絶品「常磐ひらめ」のカルパッチョ
2017年1月15日 第20回 市場で最高値で競り落としたアンコウ汁
2017年2月19日 第21回 アイナメの松皮造りとアラ汁
2017年3月19日 第22回 祝・操業区域拡大 相馬の小女子サラダ

 

というような日程でありました。

 

しかし、本当にすみません、いろいろバタバタ、バタついておりましたものでその模様をまとめるのをサボっておりました。申し訳ありません。ツイッターやフェイスブックでは適宜発信はしておりましたが、放射性物質もほとんど検出されず、速報性もなく、単なる「食レポ」になりそうだったものですからなかなかこちらに更新できなかったのです(年度末で仕事が忙しくて……)。

 

というわけで、今回は19〜22回の冬期の調べラボの模様をまとめてお伝えしつつ、調べラボってここがすげえんだってところ解説したいと思います。どうせ食レポになりそうだけど。

 

 

調べラボのここがすごい① 試食が毎回マジでヤベえ

 

調べラボでは、毎回、福島県内で漁獲された試験操業の魚を試食します。よく「原発沖で釣ってきた魚を食ってる」と勘違いされるのですが、原発近傍で釣った魚はすべて調査に回しています。だって10km圏内は未だに漁を自粛してるわけですし、それを食べちゃうというのもおかしい話になりますし、スーパーや魚屋に行けば誰もが「買える」魚を使わないと意味がありません。

 

というわけで、試験操業の魚を使った料理を楽しむことができます。水族館の入館料は必要ですが、一度入ってしまえば試食はタダです。特選素材を心ゆくまで楽しめる。それが「調べラボ」の最大の醍醐味です。調理はアクアマリンふくしまのレストランの大将がやってくれています。なので味に関しては文句のつけようがありません。マジでヤバいです。

 

 

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第19回は常磐ものの王者「ヒラメ」のカルパッチョ。たっぷりの野菜で頂きました。ヒラメの身がぷりぷりで、旨味と脂がほどよく口の中で絡み合っていきます。刺身の厚みを見て下さい。こんな贅沢なカルパッチョ、そう食べられるもんじゃありません。大盤振る舞いの調べラボだからこそ存分に楽しめるのです。よだれを垂らさずにいられません。

 

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第20回はいわきのアンコウを使ったアンコウ汁でした。写真は、レストランで白飯だけを買ってきて、そこにアンコウ汁をぶっかけた「アンコウ汁ぶっかけめし」。普通のお客さんは「汁」を楽しみますが、ここ最近はレストランで白飯を買ってくる猛者がたびたび登場しています。ぷりっぷりのアンコウ。これ料亭で食ったらクソ高いっすよ。それが無料。無料だがんね!!! 来ない理由はありませんぜ。

 

これね、調べラボに合わせて意地でもアンコウを入手しなければならないわけです。富原獣医から仲買の業者さんにリクエストがいき、その仲買さんがいわき中央卸売り市場で購入します。この日のアンコウは、競りで一番値段が高くついた、一番型の大きい、ほんとだったら魚屋さんが買っていきたいシロモノだったそうです。それをなぜか「水族館」が最終的に使って、タダで振る舞っちゃう。その事実こそ、調べラボの「クオリティ」を伺い知るエピソードですよね。

 

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第21回ではついにアイナメ登場。アイナメってほのかに磯の香りがするんですよね。藻なども食べてるせいか、最初からほのかに「昆布〆」されてるような。そして皮と身の間が一番うまいということで、それを逃さず食べるために「松皮づくり」で召し上がります。味付けはカルパッチョ風ですが、醤油をもらって醤油で食べてる人もいました。和食料亭でしか食べられなさそうな素材を、手の込んだお料理で楽しめるんが調べラボなんですね。いやあ、すごい。

 

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見てみて、こんな感じで大盤振る舞いです。ちょっと味気ない紙皿ですが、味は折り紙付き。

 

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第21回はアイナメの「あら汁」も出たので、レストランから白飯を買ってくれば「調べラボ定食」の完成。店頭で食券を買うんですが「調べラボで買います」と告げると話が早いです。うみラボの特選素材食って、がっつり胃を満たしちゃって下さい。

 

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第22回は小女子サラダ。相馬産のコウナゴです。これまで試験操業のエリアは原発沖20km圏外だったんですが、このたび自粛エリアが縮小され、原発沖10kmまで漁ができるようになりました。詳しくはyahoo個人に掲載した拙稿「常磐もの完全復活への道 福島沖の試験操業の海域が拡大決定」をご覧頂ければと。海域拡大についてまとめています。

 

このように、旬の素材だけでなく、試験操業などと連動した「話題の食材」「今食べておくべき食材」がそこはかとなく食べられるのが調べラボなんです。「なぜ今回はこの食材なのか」を考えると、さらに福島の海についての理解がマシマシになります。ぜひこの試食、御注目下さい。そんじょそこらの食のイベントよりおいしいものが食えますよ!!

 

 

調べラボのここがすごい② 富原獣医の「さばき方講座」

 

まずはこちらをご覧下さい。

 

 

これな。調べラボは、福島の魚の放射線量を測るだけじゃないんです。そもそも魚についての理解が深まる「トリビア」がたくさん。一番人気がやはり富原獣医による「さばき方講座」ですね。映像では「ヒラメ」ですが、毎回、計測のために魚をさばくので、それがそのまま料理教室になっちゃうんです。

 

結局、魚って食べてナンボ。おいしく楽しむなかで魚への理解が広まります。そして自分でさばくからこそ、命を頂くことのありがたみを感じることができる。これって「食育」にもつながりますよね。つまり、調べラボは「線量を測るイベント」であること以上に「食育プログラム」になっているわけです。魚の魅力を知る、魚の生態を知る、そして最後に汚染の状況や放射線のことがわかる。というような理解の順序なんですね。

 

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第20回ではアンコウのさばき方教室が開かれました。なかなか最近じゃ家でアンコウさばく人もいないと思いますが、「切り身」だけじゃなく、こうして「魚をさばく」ことの意義や大変さを学んでいきます。科学的に知るということも大事ですし、「どこがうまいか」を知ることも大事。日常の食を通じて、魚に対する科学的理解が深まってくるわけです。子どもたちにも人気の企画です。

 

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スーパーに行くと、肉も肝も分けられて販売されているアンコウですが、それがどのように捌かれ、区別されて店頭に並ぶのか。それを知ることもまた食育です。もとはどういう形をして、どこをどう捌いたからこうなる。そういうプロセスを辿ることで、魚の「流通」を知ることができ、最終的に食の「安心」が強くなっていきます。ぼくたち、魚のこと何も知らないんですよね、意外と。

 

 

調べラボのここがすごい③ 吉田画伯の「さかなトリビア」

 

富原先生の部下でもあるアクアマリン吉田さんの「さかなトリビア」も、魚に対する理解が深まりますよ。理解を促してくれるのが、吉田さんの画力。魚のイラストがめっちゃうまいので、その魚についての詳細情報を分かり易く知ることができるんです。これもまた「調べラボ」のウリの1つですね。普段は富原先生の指示で、検体や試料をすり潰したり計測器にかけたりと、そういう任務が多い吉田さんですが、その吉田さんの絵のおかげで、学びが広がります。

 

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意外と知られてないアンコウの特徴。イラストがうまい・・・。

 

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複数いるアイナメ科の魚。なるほど、尾びれの形が違うのか。知らなかった・・・。ホッケってアイナメ科なんだ!

 

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エッチガニでありホンダガニ。「H」だからホンダwwww!!!

 

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イカナゴ、シロウオ、シラウオの違い。そんなの知らなかった・・・・。

 

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こちらがアクアマリンふくしまの吉田さん。富原獣医の助手だけあり魚の知識はさすが!  計測ではいつも粛々と作業してますが、うみラボでも毎回大物を釣り上げてくれる頼もしいお兄さんです!! 魚について知らないことは吉田さんに聞こう!!

 

 

調べラボのここがすごい④ わかりやすい線量解説

 

魚を食べ、魚を知り、そして最後に「線量」を読み解いていきます。放射線の基礎的な中身から、数値の持つ意味を分かり易く解説してくれるのでむちゃくちゃ理解が深まります。富原獣医、お話が上手で説明がわかりやすいんですね。聞いていてストレスを感じることはないと思います。わたしたちにもよくわかる言語に変換した上でお話して下さるからでしょうか。

 

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プロジェクターに測定画面を表示してリアルタイムで解説してくれます。なので「納得」が深いんですね。分からないことがあれば富原獣医に目の前で聞けるので、「深く科学的に知りたい」という人も安心。魚の生態から解説してくれますよ。

 

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毎回、測定する検体は3体ほど。1検体あたり1時間必要なので、全部の数字が出そろうのは、だいたい午後1時半くらいです。調べラボでは計測する魚、ここ最近はN.Dが増えてきました。まあ、冬期は原発から遠く離れた小名浜港周辺で釣った魚がメインですからね。とても安心ではあります。

 

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原発近傍で釣った90cm超えのヒラメも、セシウムは結局12.6Bq/kgのみ。震災前生まれでも漁協の自主基準50Bq/kgを超えることはほとんどなくなってきました。こうして目の前で測ることで信頼できるデータになります。福島の魚が心配だ、という方にこそ体験して頂きたいですね。線量の持つ意味がよくわかると思います!

 

で、改めてこうして振り返ると思いますが、入り口は「おいしい」なんですね。そして「楽しい」や「ためになる」が入ってきて、それが深まる中で最後にデータから読み取る「安心」が登場する。毎回たくさんの方がいらっしゃいます。皆さん自然に「福島の魚を食う」ことをしている。無意識にです。そして専門家がそこはかとなく存在する。そういう設計になっているのが、すばらしいと思います。

 

うみラボは、今年も4月から復活します。冬の間は調査に行かず、調べラボでも「小名浜で釣ってきた魚」を測ってきましたが、次回より「うみラボで釣った魚の線量計測」の状態に戻ります。より「リアル」な福島県沖を感じてもらえると思います。ぜひお越し頂き、福島についての情報のアップデートにお役立て下さい。

 

ではでは。

 

 

小松けんきゅう員
小松けんきゅう員

うみラボけんきゅう員。釣るよりも食べるほうの専門。