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第4回いちえふ沖海洋調査レポ(前編) – いわき海洋調べ隊「うみラボ」公式サイト
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第4回いちえふ沖海洋調査レポ(前編)

福島の海はどうなっているのか!
シロウトの集まりでもいいからとにかく行って調べて測ってみっぺ!

 

ということで、去る8月17日(日)、私たちいわき海洋調べ隊「うみラボ」は福島第一原子力発電所沖で第4回目の調査を行ってきました。前回に引き続き、福島第一原発沖での「海底土の採取」と「サンプル魚の捕獲(釣り)」、それに含まれる「放射性物質の計測」という3つのミッションを完遂して参りました。

 

そこで今回から3回に分けて、調査の模様と計測結果についてレポートさせて頂きます。ツイッターなどでは「仮測定」どまりの発信でしたが、当ブログでは「本測定」の結果も交えて、できるだけ詳しくレポートできればと思います。ぜひ最後までおつき合いください。

 

―うみラボ、ラボ度高まる

 

昨年11月にスタートした「うみラボ」。最初はドシロウト感丸出しの調査でしたが、2回目の調査より環境水族館「アクアマリンふくしま」さまの協力を得ることができまして、回を追うごとにラボらしくなっております。

第1回 2013年11月 原発沖で海水を採取
第2回 2014年4月 原発沖で海底土を採取
第3回 2014年7月 原発沖で海底土とサンプル魚を採取
第4回 2014年8月 原発沖で海底土とサンプル魚を採取し、
沖合20kmの洋上風力発電設備を視察&釣り ☜ イマココ

 

今回はですね、前回よりさらに突っ込んだ調査をすべく、原発沖20kmにある洋上風力発電設備まで移動し、そこを視察したうえで、さらにそこでもサンプル魚を採取する試みです!!

 

ところで、

 

前回の調査では、悪戦苦闘しながらも原発沖で3尾のヒラメを釣り上げて計測することができました。また、アクアマリンの富原獣医にも貴重なお話をたくさん伺うことができました。その結果わかってきたことをおさらいしておきます。

 

―ヒラメに関してわかってきたこと

 

①体長50cmを上回るヒラメは震災時に成魚だったため、事故当時に原発近くを泳いでいた個体は体内に大量の放射性物質を取り込んでいる可能性がある。事故から3年半近く経った今でも、国の基準値である100Bq/kgを超えるような個体も見つかっている。

 

②体長50cm未満のヒラメは震災後に生まれた、あるいは震災時に稚魚だったことが考えられ、放射性物質がすでに希釈された海で育っていることから、個体差はあるものの多くの場合N.D.である。

 

③ヒラメは餌を追って移動する魚であり、遠くから泳いできた個体もあれば、原発周辺を泳ぎ続けている個体もあったりと「個体差」が大きい。50cm以上でも、原発事故時に「原発から遠い海域にいた個体」は多くの場合かなり低い。

 

④50cm以上で「原発近海をぐるぐると泳いでいるような個体」も、エサとなる小魚は最近になって生まれたもの(放射性物質が希釈された海域で育ったイワシなど)になりつつあり、このような小魚は体内に放射性物質を取り込んでいないため、こうした小魚を食べ続けた結果、放射性物質の排出が進んでいる。

 

⑤以上のような傾向ではあるが、国の基準値である1kgあたり100ベクレルを超えるような個体もまれに見つかっており、「ヒラメは全て安全」とは言いきれない。従ってヒラメは「試験操業」の対象にはなっていない。また、体長の小さな個体にも “現在の” 原発沖の環境影響が出てくる可能性もあり、これを見定めるためにも継続して調査すべきである。

 

ですので、「我々がやはり継続して海洋調査を続ける意義はある!」というわけでして、今回もこうして福島第一原発に向かうわけです!!

 

―調査船出発

 

調査船出発!

調査船出発!  一路北へ。

 

さて、調査ですが、8月17日(日)に行ってきました。今回は時間を少し早めて朝8時すぎには出港しまして、原発沖を目指します。今回の調査も、長栄丸の石井宏和船長にご協力頂いております。船長、ありがとうございます!!

 

久之浜を出て北に向かうと、広野火力発電所、福島第2原子力発電所と通過をしていきます。途中、富岡漁港や小良ケ浜漁港などでは、富岡出身の石井船長からもお話を頂きつつ、震災前の歴史に遡って富岡について考えていきます。参加者同士が震災について、またはエネルギーについて考える貴重な時間。うみラボ調査には、「ツアー的」な側面が確かにあります。

 

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この日の福島第二原子力発電所の模様

 

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富岡町に位置する旧小良ケ浜漁港と灯台。左側のスロープになっているところに船をつけたという

 

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福島第一原子力発電所に到着。この日はずいぶん霧が発生していた

 

久之浜漁港を出発してから1時間と少しで、双葉郡大熊町の福島第一原子力発電所沖1.5kmのポイントに到着です。空間線量はこの日も0.03μSv/hと非常に低く、安心して調査に当たることができます。

 

まずは海水と海底土の採取です。

 

海水はうみラボ研究員の小松が、海底土はアクアマリンの富原せんせいが巧みに採泥器を使ってそれぞれ採取します。海底土を採取する採泥器は「エクマンバージ採泥器」と呼ばれるもので、左右に開くスコップで海底の土をつかみ取る仕組みになっています。過去の調査でも、このエクマンくんが大活躍でした。

 

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けんきゅう員の小松が採水!

 

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アクアマリンふくしまの富原せんせい(右)が採泥!

 

泥の採取を終えると、さあ続いてはサンプル魚の採取(釣り)です。

 

うみラボメンバーには「釣りキチ」が何人かいるのですが、やはり血がたぎるんでしょうね、釣りが始まると目の色が変わって勝負師の顔になってきます。今回はアドバイザーとして協力頂いている筑波大学の五十嵐泰正せんせいも乗船したのですが、五十嵐せんせいも筋金入りの釣りキチでありまして、普段見ることのない表情を見せてくれました~!!

 

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五十嵐せんせいの釣り。ここからとんでもない戦いが始まるとは、この時は誰も知らない。

 

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五十嵐せんせい当たりがァァァァァァッ!!!

 

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闘う社会学者、教壇では絶対に見せないこの表情w!!

 

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なんじゃこりゃあああああ!!!

 

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サメ釣れました♡

 

幸先よく(いいのか?)五十嵐せんせいがサメをゲット!! これはすさまじい。いきなりこんなサメがヒットするとは思いもよらなんだ! 富原せんせいによると、このサメは「ハナザメ」というサメらしいですね。こんな原発沖の近海をサメが泳いでるんだなあと驚きです。海洋調査に来てるわけですがね、こうして海の生態系というか、ガチの状況を知ることができて非常に興味深いです。

 

そしてそして、五十嵐せんせいに続いて、うみラボけんきゅう員の八木もアイナメをゲット!!!

 

前回の調査ではフグしか釣れず「フグ大臣」を襲名した八木ですが、皆が生き餌を使う中でルアーを突き通すなど、釣りキチとしての矜持を見せつつ、ついに日本一うまいと言われる「常磐沖のアイナメ」を釣り上げました!!!

 

これはすごい。装備もエサも限られたもののなかで環境にフィットし「フグ大臣」の汚名を返上。さらに大物を狙う姿に、八木の底力を見た気がしましたっ!!

 

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けんきゅう員八木がアイナメをゲットする

 

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けんきゅう員小松は自分で釣ったわけでもないヒラメを持ってドヤ!

 

しかしうみラボメンバー、その後はほとんど釣れず・・・・。石井船長が先手を打って声をかけて頂いていた「釣り職人」の皆さんが、ヒラメ、アイナメ、メバル、イナダなどを釣ってくださいました。これで安心です。

 

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職人のせんせいのおかげで釣果はそこそこ満足できるものに

 

―原発沖20kmにあるアイツを目指してヨーソロー

 

これで最低限のサンプルを採取できたので、このポイントを移動し、沖合20kmにある洋上風力発電設備に向かいます。今回は、その設備を視察しつつ、そこでもサンプル魚を採取し、原発直近と沖合とで魚に含まれる放射性物質にどのような差があるのかを調べてみたいと思っています。

 

時間にして1時間。天気も少しずつ回復し、薄い雲を通過して夏の日差しが照りつける中、長栄丸は沖合までひた走り、見えてきました、海に浮かぶ黄色い建造物が・・・。

 

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写真の左側が、変電設備である洋上サブステーション「ふくしま絆」(左)。右側が、ダウンウインド型浮体式洋上風力発電設備「ふくしま未来」です。霧が出ててよくわかりませんが、右側の風車がゆっくりと回っていまして、発電の実証実験が行われています。

 

この実証実験プロジェクトは「福島洋上風力コンソーシアム」という名前がありまして、日本を代表する企業と大学が共同で実証事件を行っているところです。第1期で「ふくしま絆」と「ふくしま未来」を、第2期で、タイプの違う浮体式風力発電設備を2基建設し、研究を進める計画です。風力発電が、これからの福島の新しい主要産業になりうるのか。その実験を行っているというわけです。

 

まさに福島の未来がここにある。

 

風車がついているほうの「ふくしま未来」。調べてみますと、いろいろなことがわかりますね。ブレード(羽)の直径は80m、水面から約106mの高さで風車が回っています。出力は2000kWで、一般家庭約1700世帯分の消費電気量を賄える規模を持つそうです。

 

サブステーションである「ふくしま絆」は、電力の損失を少なくするために設置されたもので、世界で初めて「高電圧に変電する設備」が載せられているそうです。

 

第2期では、ここに加えてさらに世界最大級の直径164m、出力7000kWの風車2基が稼働する計画です。これが稼働を始めれば合計1万6000kWとなり、浮体式では世界最大となるのだとか。ここに、世界最大の浮体式洋上風力発電プラントが完成するわけです。

 

風力発電設備は非常に多くの部品を必要とすることから、いわき市などではこうした「部品」の製造メーカーの工場を積極的に誘致して、「風力発電」をいわきの新しい産業の柱にしようと動いていると聞きます。部品の製造メーカーの工場を誘致することで、部品だけでなく「輸送」や「洋上建設」などの企業も活気が生まれそうですね。

 

―風力発電プラントのそばでも釣る!

 

もちろん、この場所でも釣りますよ、福島のエネルギーについて思いを馳せつつ。

 

なぜここでも釣ることになったかというと、例えば同じアイナメでも、原発沖2kmと20kmではどの程度放射性物質に違いが出るのかなど、傾向が掴めるのではないかと感じたからです。

 

釣り糸を海底まで落としてみると・・・・。

 

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五十嵐せんせいが釣り上げたアイナメ!!! 右側は社会学者の開沼博さん!!!

 

アイナメどーーーん!!

 

さあ、これをアクアマリンで測れば何らかの傾向などが読み取れるかも!
非常に期待できる釣果です。

 

というわけで、アクアマリンふくしまでの放射性物質の計測については、次回のエントリで詳しくレポート致します。速攻で後編まとめますので、しばしお待ちを!!!

小松けんきゅう員
小松けんきゅう員

うみラボけんきゅう員。釣るよりも食べるほうの専門。