第6回いちえふ沖海洋調査レポ(後編)
それでは、今回釣った魚の放射性物質の検査結果をざざざっとご紹介します。
爆釣でしたので、ヒラメが10検体、イナダ、アイナメ、キツネメバルをそれぞれ測っています。計測に当たっては500gの筋肉部分の肉が必要になるため、アイナメについては2尾、イナダも2尾、キツネメバルについては3尾を混ぜてミンチにしてマリネリ容器に詰めて計測しています。ヒラメはすべて1検体ずつです。
検体:キツネメバル(3個体を1回で計測)
平均全長:32.4cm 平均体長:26.8cm 平均体重:646g
Cs137:63.5Bq/kg
Cs134:22.1Bq/kg
Cs合計:85.6Bq/kg
富原獣医コメント:体長から推察すると6〜7歳と思われます。比較的汚染度の高いソイ類ですが原発前の海域でも100Bq/kgを超えなかったのは良かったと思います。
検体:アイナメ(2個体を1回で計測)
平均全長:35.5cm 平均体長:31.2cm 平均体重:589g
Cs137:15.0Bq/kg
Cs134:N.D.
Cs合計:15.0Bq/kg
富原獣医コメント:以前、40㎝以下のアイナメは震災後生まれといっていましたが、35㎝以下を震災後生まれと訂正します。「体長」から推察すると3歳魚なので事故以降の生まれです。今回はCs134が検出限界未満でしたが、現在のCs137比で考えるとCs合計は20Bq/kg程度でしょうか。震災後の生まれですので、現在流出している汚染水の影響もあると思います。
検体:イナダ(2個体を1回で計測)
平均全長:38.5cm 平均体長:32.4cm 平均体重:640g
Cs137:N.D.
Cs134:N.D.
Cs合計:N.D.
富原獣医コメント:南方系回遊魚なので蓄積しにくいですね。
続いては、うみラボで継続して調査をしているヒラメについてです。10検体の計測結果を一気にご紹介していきます。
検体:ヒラメ①
全長:53.5cm 体長:45.5cm 体重:1505g
Cs137:N.D.
Cs134:N.D.
Cs合計:N.D.
検体:ヒラメ②
全長:56.8cm 体長:48.3cm 体重:1687g
Cs137:27.4Bq/kg
Cs134:12.6Bq/kg
Cs合計:40.0Bq/kg
検体:ヒラメ③
全長:55.5cm 体長:46.7cm 体重:1520g
Cs137:8.46Bq/kg
Cs134:N.D
Cs合計:8.46Bq/kg
検体:ヒラメ④
全長:51.2cm 体長:49.0cm 体重:1339g
Cs137:N.D.
Cs134:N.D
Cs合計:N.D.
検体:ヒラメ⑤
全長:50.5cm 体長:43.2cm 体重:1292g
Cs137:N.D.
Cs134:N.D
Cs合計:N.D.
検体:ヒラメ⑥
全長:53.7cm 体長:45.6cm 体重:1462g
Cs137:N.D.
Cs134:N.D
Cs合計:N.D.
検体:ヒラメ⑦
全長:54.3cm 体長:46.2cm 体重:1499g
Cs137:7.38Bq/kg
Cs134:N.D
Cs合計:7.38Bq/kg
検体:ヒラメ⑧
全長:51.1cm 体長:43.0cm 体重:1247g
Cs137:5.44Bq/kg
Cs134:N.D
Cs合計:5.44Bq/kg
検体:ヒラメ⑨
全長:52.2cm 体長:43.9cm 体重:1305g
Cs137:N.D.
Cs134:N.D
Cs合計:N.D.
検体:ヒラメ⑩
全長:56.3cm 体長:48.9cm 体重:1702g
Cs137:8.9Bq/kg
Cs134:N.D
Cs合計:8.9Bq/kg
富原せんせいコメント:
10個体中5個体が検出限界未満(N.D.)、1個体のみ40Bq/kgですが残りはCs134を加味して10Bq/kg前後と非常に低い検出結果となりました。全個体が雌であり、体長から推察すると3~4歳魚と推察されます。雌の60㎝以下は食品としては安心できるのではないかと予想できる結果となりました。まとまった数で調査できると信頼値が上がりますね!
おおお、今回は全個体が雌であり、国の基準値(100Bq/kg)を超えるような個体もゼロ。魚のプロである富原せんせいからも「60cm以下の雌なら食用にしても安心できそうだ」というコメントを頂き、非常に希望の持てる結果となりました。これ、原発沖1.5kmの数値ですからね。相馬やいわき沖ならば、さらに希望の持てる数値が出るものと推察されます。
とはいえ、ごくまれに原発の湾内などに侵入してしまう魚もいるはずですし、ヒラメはまだ試験操業の対象になっていません。さらに厳格な調査を行い、安全が確かめられないと試験操業の対象になはならないと思いますが、このように「大きさ」を基準にしていくことで汚染の傾向が読み取れるというのは非常に大きな収穫でした。
福島県の水産試験場なども調査結果を公表していますが、魚の体長までは結果に記載していません。しかし、これまでのうみラボの調査で、特にヒラメやアイナメなど、線量が高い傾向にあった魚は「体長」を見ていくことで汚染の傾向が読み取れることがわかってきました。来年も、この「体長」に着目して調査を継続できればと思います。
計測アドバイザーの津田和俊せんせいからもコメント頂いてます。
これまでも原発近辺の海のヒラメなどの魚種の測定は東電などが行っておりましたが、うみラボのモニタリングはサンプリング個所を原発2km沖のヒラメのポイントに的を絞った上で、体長および魚齢との相関がわかるという点で、非常に意義のあるものだと思います。具体的には、原発事故後に産まれたことが確実な55cm以下のヒラメは既にほとんどNDで、原発事故前から生息していると考えられる60cm超のヒラメでもほとんどが100Bq/kgの基準値をかなり下回っている、と明解な傾向がわかりつつあります。
今年の漁、じゃなかったモニタリング活動は今回でおしまいですが、来年も引き続き釣り、じゃなかったサンプリングを継続していきたいですね。また、これまで100Bq/kgの基準値を超えるヒラメも60cm以上のものが一匹みつかっただけですので、来年はがんばって60cm以上のヒラメは全部釣り尽してやろうという勢いで測定していきたいですね! いやあ、それにしても最後の最後で、これだけ充実した調査ができてほんとうに安堵しました。協力して頂いた皆さんのおかげです。改めて、この場をお借りして御礼申し上げます。
さて、このうみラボ6の模様は、写真でちらっと紹介したように、NHK福島の取材を受けておりまして、近日中にこの模様が放映される予定です。ぜひご覧頂ければと。またですねえ、おそらく年明けになるかと思いますが、昨年同様「サイエンスバー」を開催する予定です。詳細が決まりましたらこちらでご案内いたしますね。
それでは、今年のうみラボの活動はこれにて終了。またブログには最新の動静などについて書くことがあるかと思いますが、このあたりで仮締めとさせて頂きます。1年間、大変お世話になりました。来年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m