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第1回調べラボ・調査&計測結果 – いわき海洋調べ隊「うみラボ」公式サイト
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第1回調べラボ・調査&計測結果

お世話になっております。うみラボけんきゅう員の小松です。5月17日に開催されました、「第1回調べラボ」の模様をお伝えします。

 

今回から始まった調べラボ、「調べ」と書いて「たべ」と読む、すなわち「たべラボ」。「調べる」と「食べる」両方の意味がかかっている企画です。うみラボの調査で釣ってきた魚を調べて、そしていわきの試験操業の魚を食べようという、食べて学んで調べておいしいサイエンスカフェというあんばいです!

 

うみラボけんきゅう員の八木が、アクアマリンの富原せんせいと「裏アクアマリンツアー」というものを企画しており、「調べラボ」はその増大版という位置づけです。富原せんせい、吉田せんせいのお2人からさまざまな話を直接伺いつつ、いわきの海の豊かさを知ろうじゃないかという、とても素晴らしいイベントなんです!

 

5月17日日曜日。朝10時に調べラボスタート。前日のうみラボで採取した海底土、マダラ、マガレイ、メバルなどの放射性物質を測っていきます。その都度、お2人の先生から専門的なレクチャーがあり、しっかりと基本を理解した上で、汚染の状況を知ることができます。うむ。

 

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アクアマリンふくしまの獣医、富原聖一せんせいのレクチャー

 

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放射性物質の計測についても詳しく教えて頂ける

 

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手慣れた様子で魚をさばく富原せんせい

 

 

魚の年齢を知る上で重要なカギとなる「耳石(じせき)」も、実際に採取して顕微鏡に映してみたり、計測中の土や魚のスペクトルを見つつ計測のイロハを学んだり、はたまた富原せんせいや吉田せんせいが釣った魚について話を伺ったりと、まあとにかくいろいろ自分の知りたいことを専門家に聞ける機会になっているのですよ。

そして、うみラボの活動の様子を紹介するパネル展示なども充実しておりまして、いわきの海の現在位置を知ることができる、非常に有意義な展示になっていました。

 

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そしてなんといっても、いわきの試験操業の魚の試食。今回は、四倉の老舗大川魚店さんのご協力で入手した「メヒカリ」と「ニクモチ」の干物を試食。それぞれ「マルアオメエソ」、「ミギガレイ」と正式名称が書いてあるのが水族館らしいなとニヤリ。

 

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いわき名物メヒカリ焼き。干したものは旨味が凝縮されている

 

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手頃な価格で楽しめるニクモチの干物。いわきの定番!

 

で、計測結果です。すべて前日のうみラボで採取したサンプルになりまして、当日もこのようにすべての検体を出して展示もしているんですね。これもひとつの水族館ならではの展示でしょう。これが福島第一原子力発電所沖で釣ってきた魚になります。

 

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計測される魚は「うみラボ」のいちえふ沖海洋調査で釣ったもの!

 

※マゴチのみ、タイミングよく釣れて釣具店に持ち込みになった個体がありまして、それも測ってみましたので参考までに。

 

検体 海底土 採取場所:福島第一原発沖1.5km

20150602073417

 

Cs137 : 146Bq/kg
Cs134 : 36.7Bq/kg
Cs合計:183Bq/kg
富原コメント:前回の調査では53Bq/kgで、いつも(平均267Bq/kg)より低い結果が出たので、冬場に海が荒れて拡散して薄まったのかもと思ったのですが、今回の結果からみると、あまり変わっていないですね。海底土は移動するので同じポイントで測定しても測定値にはばらつきがあります。今まで200〜300Bq/kgの範囲に収まっていたほうが珍しかったのかもしれません。今後の継続調査の結果次第ですね。

 

 

検体①シロメバル 4個体 平均全長27.0cm

 

20150529122635

 

Cs137 : 14.8Bq/kg 
Cs134 : 6.85Bq/kg
Cs合計:21.6Bq/kg
評価:こちらは平均全長が27cmと、原発事故当時、すでに成魚だった個体と考えられます。汚染水流出時に取り込んだ放射性物質がまだ抜け切れていないということが考えられます。ただ、非常に線量の高い個体として知られていたメバルですが、100Bq/kgを超えるような個体は探すのが難しいほど減少してきているのも事実。今後も継続して調査していくことが求められます。

 

 

 

検体②マガレイ 4個体 平均全長36.6cm

 

20150529122656

Cs137 : N.D. 
Cs134 : N.D. 
Cs合計:N.D.
評価:マガレイは、すでに試験操業の対象になっています。試験操業の対象漁区は「県内全域」ではありますが、念には念を入れて原発沖20km圏内では操業されていません。しかし10km圏内でも実際にはこのようにN.D. すでに安全が確認された魚種ですので、検出されないことはわかってはいましたが、こうして実際の数値にも出ており安心できますね。

 

 

 

検体③マダラ 1個体 全長61.5cm

 

20150529122727

Cs137 : N.D. 
Cs134 : N.D. 
Cs合計:N.D.
評価:マダラもすでに試験操業対象になっています。さらに、前々回のうみラボでも大量のマダラを釣り上げ計測してみましたが、いずれもN.D.でした。マダラは出ない。こういう結論でよいでしょう。こちらも試験操業の正当性が確認できました。

 

 

 

検体④アイナメ 1個体 全長44.5cm

 

20150529122815

 

Cs137 : N.D.
Cs134 : N.D.
Cs合計:N.D.
評価:かなり大型のアイナメでして、原発事故発生時すでに成魚だったことが推察されます。事故直後2011から2012年にかけて、非常に高い線量の個体が見つかったこともありましたが、排出が進んでいるものと見られます。しかし、この個体は原発沖10km沖ギリギリあたりで釣った個体ですので、さらに原発そばのものになるとわかりません。継続して調査しなければなりませんね。

 

 

検体⑤マゴチ 3個体 ※採取場所:常磐共同火力勿来発電所排水部

 

20150529122712

Cs137 : N.D.
Cs134 : N.D.
Cs合計:N.D.
評価:マゴチも沿岸部に棲む魚で、未だに試験操業の対象にはなっていません。原発から遠く離れたいわき市の勿来火力の排水部分、まあここは震災前からずっと有名な釣りポイントでしたけれども、放射性物質は検出されませんでした。

 

 

検体⑥シロメバル(4個体) 採取場所:福島第一原発沖1.5km

 

20150602073518

Cs137 : 84.0Bq/kg
Cs134 : 21.7Bq/kg
Cs合計:106Bq/kg
富原コメント:原発前10kmで21.6Bq/kg。原発前1.5kmで106Bq/kgでした。うみラボで調査を始めてから2例目の100Bq/kg越えです。以前の測定結果で解説した通り、シロメバルが一番100Bq/kgを超える確率が高い魚です。これは、シロメバルが寿命の長い魚で、移動もあまりしない根魚だからです。特に原発の南側の浅い海域の根に付いている大きなシロメバルはまだまだ汚染が残っています。これは2011年4月に汚染水が大量放出され、南側に流れたからです。今回、100Bq/kgを超えた原発前1.5kmの個体の平均年齢は8歳ほどだったので、この時放出された汚染水の影響が一番残っている魚です。
同じシロメバルでも、少し海域が離れた水深の深い原発前10kmのシロメバルは21.6Bq/kgでした。原発前1.5kmの個体よりも一回り小さく、平均年齢が6歳ほどでした。事故前生まれですが若い分代謝も早かったのか、少し深い海域だったからか100Bq/kgを超えませんでした。小名浜で釣った検体⑦については、計測に必要な量の半分ぐらいで測定したので、たぶん高めで測定されています。まあ、こんなもんですね。

 

 

検体⑦シロメバル 採取場所:いわきサンマリーナ

 

20150602073547

 

Cs137 : 12.6Bq/kg
Cs134 : N.D.
Cs合計:12.6Bq/kg

 

 

検体⑧アイナメ(2個体) 採取場所:福島第一原発沖10km圏内

 

20150602073532

Cs137 : 8.59Bq/kg
Cs134 : N.D.
Cs合計:8.59Bq/kg

 

 

で、ここからが大事なんですが、汚染した海底土からセシウムがどの程度移行するのかという調査を、アクアマリンふくしまと中央水産研究所のグループがやっていたんですね。で、その結果、海底土の放射性セシウムは、魚へはほとんど移行しないとの結果が出たそうです。

 

 

調査結果も読ませて頂きました。

 

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グループは、2014年7月から49日間、5トン水槽に底魚のヒラメ約40尾と、浮魚のクロダイ約100尾を分けて飼育。第1原発近くから採取した1キロ当たり400ベクレル程度、同県いわき市四倉沖の100ベクレル程度の海底土を2基の水槽にそれぞれ敷き詰め、海水は同市小名浜沖の水を掛け流し、餌は放射性セシウムを含まない配合飼料を与えました。

 

その結果、海底土の汚染濃度の違いや底魚、浮魚にかかわらず、海底土や海水から放射性セシウムをほとんど取り込まなかったそうです。富原せんせいによると、「現在の福島県沖においても、魚が新たに海底土から放射性物質を取り込み、食品の基準値1キロ当たり100ベクレルを上回る水準に達する可能性はきわめて低い」と解説してくれました。

 

今回の実験では、魚の餌になるアオゴカイの飼育も同様の条件で行ったところ、海底土の放射性セシウム濃度に対してして20分の1から40分の1程度の移行を確認したそうです。富原せんせいによると「実際の環境では魚は餌となる生物を介しても放射性セシウムを取り込んでいると考えられるため、全容を解明するためには餌となる生物を介した実験を継続する必要がある」とのこと。

 

泥の吸着力というのはすごいんですね。引き続き、全容解明のために調査が続くとのことですので、うみラボも注視したいと思います。

小松けんきゅう員
小松けんきゅう員

うみラボけんきゅう員。釣るよりも食べるほうの専門。