第6回調べラボ・調査&計測結果
皆さんこんばんは、うみラボけんきゅう員の小松理虔です。10月25日に開催された調べラボの模様、そして計測したサンプルの計測結果についてお知らせ致します。
今回の調べラボ、メイン食材は木戸川のサケ!
そうです、福島県のサケの名産地、楢葉町の木戸川のサケです。いやー感慨深い。原発事故で大きな影響を受け、「原発からも近いし木戸川のサケなんてもう食わんにいべ!」とか思ってましたので、こうして復活の日がやってきて、そしてこうして食うことができる。すばらしいことだと思います。木戸川サケついに復活!
えええ楢葉町の川を泳いでるのに、食べられるわけないよ!
なんて思っているあなた、冷静に考えてみて下さい。サケって川で生まれて川に戻ってくる魚なんですけれど、戻ってくるまでは外洋、つまり海を泳いでるわけですよ。原発から遠く離れた北洋で生活しているので、回遊魚と同じでセシウムが溜まらないというわけ。
富原せんせいの解説をまず載せておきます。
アクアマリンふくしまでは2012年より木戸川に遡上してくるシロザケの放射性物質量を木戸川漁業協同組合と共同で行っています。東京電力福島第一原子力発電所から南に17km。そこには本州最大級のサケの遡上数を誇る木戸川があります。良い年は10万尾を超えるサケが遡上します。冬に孵化したサケは初夏になると海に降り、日本から遠く離れたアリューシャン海域、ベーリング海まで北上し3〜5年をかけてオキアミなどを食べて成長し、生まれた川に戻ってきます。原発から遠く離れた北洋から帰ってきたサケに大きな放射能汚染は見られないのは当然です。
淡水魚の放射性物質は海水魚に比べて排出されづらいため、木戸川では未だに数十Bq/kgほどの汚染された淡水魚が見つかります。もし、遡上してきたサケがそれらの淡水魚を捕食したら現在の食品の基準である100Bq/kgを超えるような事態になったかもしれませんが、サケは川に入るとエサをほとんど食べなくなるので汚染されません。また、木戸川の水自体の汚染も1Bq/ℓ以下と非常に低いため、当館所有の測定器の能力ではサケから放射性セシウムが検出されることはありません。
というわけです。サケの安全性は、こうした「生態」からも、さらに「モニタリング調査」からも確認されているわけですね。安全性が確認されて食べられるようになる。これは素直にうれしいことです。
というわけで調べラボ。まな板の鯉、いやもとい、まな板のシロザケです。
ででーんと大きな身。これからこのサケを捌いていきます。
腹を捌くとイクラが! 見て下さいこの宝石のような輝きを!
子どもたちも興味津々。これが重要。これが食育。めっちゃ大事なんですよね。
木戸川のサケに魅了される皆さま。そりゃあ当然だと思います。
別室で調理されていた木戸川のシロサケのフライが登場!!! うおおおおおお!!!
くはーーーーこのサケのフライにはタルタルが合うぅぅぅぅぅっ!
そして奇跡のイクラ醤油漬け登場!
しかも紙コップに入れて飲めだって!! 目を疑う光景。しかもこれ3皿出てますからね。どれだけ飲めばいいんだよ。痛風になっちゃうよ! ってくらいのボリューム。いやあこれですよね、海の幸は豪快に食するに限るっ!
会場の模様。今回は本当にお客様が多かった。そして皆さん美味そうにフライとイクラを頬張ってらっしゃいました。こうして木戸川のサケがおいしく食べられている光景、はやく楢葉の皆さんにも見て頂きたいですね。これぞ希望です。もはや栄光しかありません!
というわけで、今回の調べラボ、大変に盛り上がりました。サケフライの盛りのよさが通路からも見えたのがよかったのかもしれませんね。鍋物だと中をのぞかないといけませんが、フライは大皿にこんもりと盛りつけられていて、しかも外から見えますから。そしてシロザケですがね、フライが合う。塩焼きなどより、フライですね。身もホクホクしててほぐれやすく、こざっぱりとした味なので、フライでも重くならない。ソースとタルタルと試しましたが、タルタルが合いました。奥さん、今年は木戸川のサケのフライですよマジで。
さて、ここからは放射性物質の計測結果です。一挙にご紹介します。
試料①木戸川産シロサケ/計測部位:筋肉/全長78cm/N.D.
試料②木戸川産シロサケ/計測部位:卵巣(イクラ)/N.D.
はい。前段で紹介した通り、木戸川産シロサケ、身もイクラもN.D.です。当然の結果ではありますが、実際に自分たちで測ってみてN.D.でした。頭ではわかっていても、やはり目の前で測り、目の前で説明して学ぶ。このプロセスが重要だなと思います。
試料③原発沖2km ヒラメ/全長55cm/N.D.
試料④原発沖2km ヒラメ/全長56.5cm/N.D.
試料⑤原発沖10km ヒラメ/全長64.7cm/Cs合計14.8Bq/kg
試料⑥原発沖10km ヒラメ/全長61.8cm/N.D.
試料⑦原発沖10km ヒラメ/全長65.5cm/Cs合計9.14Bq/kg
ヒラメは5試料です。65㎝クラスの2試料から14.8Bq、9.14Bqとそれぞれ検出されています。耳石から査定すると大きい個体は7歳以上とのこと。7歳以上だと原発事故時にすでに成魚になっているので放射性物質が排出しきらずに少し残っています。富原せんせいによると、ヒラメは底生魚ですが餌のイワシを追いかけて50kmほどは移動するので、メバルやソイなどの根魚と違って放射性物質は蓄積されにくいのだそうです。
試料⑧原発沖2km キツネメバル/4個体/平均全長32.8cm/Cs合計21.6Bq/kg
4個体合計。富原せんせいに耳石を確認してもらったところ、1個体だけ7歳以上の個体が入っていたようで、数値も出ましたね。キツネメバルは根魚で、しかもほとんど移動しません。2011年4月1〜6日に放出された大量の汚染水の影響が強く残っている魚です。7歳以上ですとその当時成魚ですので取り込んだ放射性セシウムも多く、代謝も遅いため現在でも放射性セシウムは抜けきってません。放射性物質が検出されやすい典型的な個体ですね。
試料⑨原発沖10km ワラサ/全長49.4cm/N.D.
試料⑩原発沖10km ワラサ/全長51.9cm/N.D
ワラサは回遊魚なのでセシウムでません。以上。もう説明不要ですな。
試料⑪原発沖10km アイナメ/全長43.4cm/N.D.
試料⑫原発沖10km アイナメ/全長41.3cm/N.D.
アイナメです。出ませんでしたね。アイナメも「けっこう出る」種類だと思っていましたが、うみラボの調査結果見ても、その認識を改めないといけないかもしれません。ほとんど出なくなりましたね。以下富原せんせいのコメントです。
「アイナメはもう事故前生まれの個体も少なくなったのでしょうね。事故から5年経ち大きな汚染が残っているアイナメはもういません。ただ、福島県太田川河口域で平成24年8月に採取された25,800Bq/kgのアイナメが大きなニュースになったため未だにアイナメは食べられないと思っている釣り人も多いです。小名浜港はこれからアイナメ釣りのシーズンです。今シーズンの釣り人がどれだけアイナメを持ち帰って食べるのかが興味があります。(富原)」
試料⑬原発沖10km クロソイ/全長52cm/Cs合計39.3cm/kg
試料⑭原発沖10km クロソイ/全長45.8cm/Cs合計8.85Bq/kg
試料⑮原発沖10km クロソイ/2個体/平均全長39.8cm/N.D.
52cmの超ド級クロソイから39.3Bq/kgが検出されてしまいました。ううむ、体長がかなり大型なので震災前生まれかとは思いますが(詳しくは下の富原せんせいの解説をご覧ください)、、、、しかしそれにしてもクロソイ、デカいっすよね。ほんと最高級魚ですからね。まだ流通はしてないのが悔しすぎます。以下富原せんせいのコメントです。
「なかなか50㎝オーバーのクロソイはお目にかかれませんね。相当、高齢魚と思ったのですが肉眼で耳石を見ると4歳までの年輪しか確認できませんでした。大きい個体のせいか耳石も厚く正確な年齢は確認できてません。放射性セシウムが39Bq/kg検出されていることから事故前生まれだと思いますが、耳石をもっとちゃんと見ないと判断が難しいですね。三陸沖のデータですが全長52㎝で7歳らしいので、この個体も7歳ぐらいかもしれません。7歳ですと事故当時は成魚ですのでこのくらいの放射性セシウムが検出されても不思議はないですが事故後生まれだと汚染ルートが気になりますね」
というわけで今回の試料は15です。最後のクロソイがいくらか気になりますね。根魚ですので「出る」ことは予想していましたが、富原せんせいも耳石鑑定に悩まれた様子。魚の年齢を調べるには、耳石を見る以外に「ウロコ」からも確認できるそうですが、耳石での年齢判別が難しい場合は、ウロコでの鑑定も必要かもしれません。次の調べラボでは、おそらくウロコを見て年齢を調べる方法を富原せんせいが見せてくれるはずです。
さて、次の調べラボですが、11月15日(日)の予定です。アクアマリンふくしまで、木戸川のサケの展示をしていますので、次回の調べラボでも、テーマ食材は今回と同じ「木戸川産シロサケ」になります。気になる試食は、なんと木戸川漁協さんの協力により、木戸川名物「鮭の紅葉汁」を提供してくださるそうです。
調べ(たべ)ラボとは「食べて調べる」こと。うむ。これは紅葉汁、楽しむしかありませんな。