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第3回調べラボ・調査&計測結果 – いわき海洋調べ隊「うみラボ」公式サイト
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第3回調べラボ・調査&計測結果

みなさんこんにちは。うみラボけんきゅう員の小松理虔です。

 

アクアマリンふくしまの計測&試食イベント「調べ(たべ)ラボ」も、今回で3回目となりました。先日も、うみラボや調べラボについて福島中央テレビで特集を組んで頂くなど、毎回大きな反響を頂いております。ご覧頂きました皆さま、ありがとうございます。そして、いつも調査にご協力頂いておりますアクアマリンふくしまの皆さん、大変ありがとうございます!

 

この「調べラボ」というのはですね、私たち「うみラボ」と「アクアマリンふくしま」の共同企画になっておりまして、福島県沖で釣った魚の放射性物質をオープンな形で計測し、魚について学び、そして試験操業の魚をおいしく頂いちゃおうじゃないか、という素晴らしいイベントです。いやほんとマジで手前味噌ですけど素晴らしいイベントです。その素晴らしさ、改めてここでレポート致しますね。

 

 

―まずは海底土の計測

 

7月19日に開催された第3回調べラボ。この日計測するのは、7月4日に行われた「第10回うみラボいちえふ沖海洋調査」の際に釣ってきたメバルやアイナメの放射性物質、それから福島第一原子力発電所1.5km沖の海底土です。7月4日は霧が大変深く、調査も難航が予想されましたが、そこそこ釣果もありまして、サンプルは充分な量を揃えることができております。

 

まずは早速海底土の計測から。

 

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アクアマリンふくしまの獣医、富原せんせいのガイダンスのもと、乾燥させた海底土を計測します。7月4日の調査で採取したものですが、当日は大雨の後でしたので、川から流れてくる泥の影響を受けて、おそらく放射線量も高めに出てくるんではないかと予想していました。採取時にも、砂系よりも確かに泥っぽい印象でした。

 

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結果はセシウム合計で82.7Bq/kgと、意外にも少ない値でした。いつもこのエリアは250〜300Bq/kgくらいは検出されていたので、想像以上に低い値でした。

 

以下、富原せんせいのコメント紹介しておきます。

 

降雨後で陸域の土壌と思われる粘土質の泥が認められました。そのため、いつもの数値(250Bq/kg前後)よりも高い値を示すと予想していましたが、逆に低い値となりました。陸域の土壌は海底土に比べて大きく汚染されているはずなので、この結果は意外でした。

 

考えられるのは思ったほど陸域の汚染が高くなかったか、海流の影響で原発北側のあまり汚染されていない場所の泥が流されてきたのか、あまり説得力のある理屈が思い浮かびませんね。田んぼの中干しで流れてきた泥だったのかもしれませんし。

 

粘土の種類を分析すればどこから流れてきたかわかるかもしれません。粘土鉱物にはイライトとかスメクタイトとかカオリナイトとか種類があってその含有率を調べてみると何か手がかりが得られるかもしれません。現在、アクアマリン環境研究所では金沢大学とため池の粘土鉱物について共同研究を行っているので、機会があれば金沢大学の専門家に見解を聞いてみたいと思います。

 

あと、相変わらず放射性ヨウ素が検出されていますが、当館の測定機器はNAIシンチレーション式の測定器ですので分解能が低く、放射性鉛を放射性ヨウ素と誤検出してしまいます。放射性ヨウ素だと半減期が短いので同じ試料を時間をおいてから測定すれば誤検出かどうか判断できます。

 

なるほど、泥の種類を解析・・・・たしかにそれを探ることで、福島第一原子力発電所沖の放射性物質がどのような経路で海に流れてくるのか多角的に分析できるかもしれません。

 

 

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―原発沖で釣り上げた魚たちの計測

 

さて、続いては続々と魚の放射性物質の計測結果です。

 

※写真をクリックすると画像が拡大されます。

 

 

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左上からアイナメ、シロメバル、ヒラメ①、ヒラメ②の4検体です。いずれも7月4日の調査で釣り上げたものになります。

 

結果は以下のようなものになりました(数値はセシウム137と134の合計値)。

 

アイナメ  N.D.
シロメバル 58.7Bq/kg
ヒラメ①  28.6Bq/kg
ヒラメ②  6.42Bq/kg

 

アイナメは意外にもN.Dでしたが、シロメバルから58.2Bq/kg検出されました。国の基準値を大きく下回る値ではありますが、50Bq/kgを超えていますので気になる値です。ヒラメの28.6Bq/kgと検出されていますが、事故当時数千ベクレル級の個体が見つかっていたことを考えると、かなり排出が進んできているなという値でした。

 

富原獣医のコメントをもとに、それぞれ詳細に見ていきます。

 

まずは「アイナメ」ですが、平均全長が33cmということで「震災後生まれ」ということが推測できます。ですので、「震災直後に流れ出た汚染水の影響」を受けていません。受けているとすれば「現在の海の影響」のほうなんですね。

 

富原せんせいによると「小型のアイナメは、大型のアイナメよりも岸に近い場所に生息するので、現在の原発前の汚染状況を見るのには良い試料」なのだそうです。これめっちゃ重要です。もし今現在、小型のアイナメから放射性物質が検出されているとすると、それだけ現在進行形で汚染水が流れ出ていることになるからです。しかし結果はN.D.ということですから、現在の原発前の汚染は非常に軽微であるとわかります。

 

続いて「シロメバル」ですが、こちらは平均全長28㎝と「大型」ですので「事故前生まれ」だと推察できます。これまでのうみラボ調査でも明らかになっているように、原発近傍のシロメバルが最も汚染が残っている魚種なのですが、富原せんせいによると「7歳以上だと100Bq/kgを超える可能性もありますが、5〜6歳だと100Bq/kgは超えることはないのかもしれない」とのこと。

 

7歳以上というと代謝も弱いものになり、事故当時に体内に取り込んだ放射性物質が排出されないということが考えられます。これに対して5歳前後の個体は取り込んだ時の年齢が若く、まだ体の成長も止まっていないため、排出が進み、数十ベクレルのところまで排出されてきているというわけですね。なるほど。体長だけでなく「耳石」によって年齢を把握せよということですねー。

 

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富原せんせいが耳石を取り出す

 

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これが耳石だよーと皆に見せると歓声が!

 

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新聞記者さんも一緒に耳石を学ぶ!

 

 

さて3種類目の「ヒラメ」ですが、今回のヒラメは60cmと事故前に生まれたものか事故後に生まれたものかハッキリしません。さらに、ヒラメは根魚と違い移動する魚種なので、原発前の海域で採取された個体としても、「事故当時、原発そばの海域にいたかはわからない」魚種でもあります。

 

しかし、現在はヒラメから100Bqを超えるような放射性物質が検出されることは少なく、富原せんせいによれば「ヒラメは成長が早く、福島県沖で採取されるヒラメのほとんどが原発事故の年かそれ以降に生まれた個体であり、ヒラメで100Bq/kgを超えることはもうないと思われます」とのこと。

 

うむ。原発沖でこの状況ということですんで、相馬沖やいわき沖で100Bq/kgを超えるヒラメを見つけるのは至難の業ということになろうかと思います。これは勝手な推測でしかありませんが、原発直近「以外」の海域に限定すれば、ヒラメが試験操業の対象に加えられてもおかしくなさそうです。

 

 

―いわき市で採取したサンプルの計測

 

以下の2検体は、原発沖で釣ったものではありませんが、地元小名浜の魚はどうだろうということで、アクアマリンふくしまで採取した魚を測ってみた結果です。

 

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まずは画像左、小名川のうなぎ。

 

あ?

 

小名川のうなぎ?? っってかあのどぶ川にうなぎいるんか!!! 小名川といえば、川沿いのいかがわしい施設から大量に「泡」が流れ出てる川ですよ。うなぎといえば「夜のお菓子」が有名ですが、小名川産の天然うなぎなんて、すばらしい効き目がありそうですね(爆)

 

話を戻します。

 

今回のこのうなぎ、土用の丑の日が近いということで、アクアマリンふくしまのご好意で用意して頂きました。こういうタイムリーな魚を計測するということで、より距離感を近く感じられると思います。とても素晴らしいですね。

 

小名川のうなぎは、セシウム合計で7.84Bq/kg。体長から「震災後生まれ」であることがわかります。従って低いですね。うなぎってそこそこ高いイメージがありましたが、これもアップデートしなければなりませんな。

 

富原せんせいによると「淡水魚は、海水魚と塩類の取込・排出方法が異なるため、海水魚に比べて放射性セシウムの濃度は少し高い」とのこと。ただ、「福島県浜通りの河川に生息するウナギは海水環境に生息する餌に依存しているため、それほど高い値にはならない」とも。アクアマリンふくしまがこれまでいわきの河川で測定したウナギでは、現在まで100Bq/kgを超える個体は我々の調査では見つかっていないそうです。

 

そして、画像右側、なんですか? ア、アブラツノザメ?

 

こちらも、「夏休みに突入したということで、サメ好きのお子様用に、たまたま、小名浜沖で獲れたアブラツノザメが入手できたので」、ということでわざわざ用意して頂きました。

 

これですよ、このサービス精神。これが調べラボの素晴らしいところ。

 

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サメが登場すると、「うわああああサメだああああ」とか言って、子どもたちがいっせいに集まってくるんですね。これが歯だよ、これが鮫肌だよ、なんて言いながら、実際に触れて知って学んでいく。そしてそこにしっかりと「計測」を入れてくる。このプロセス、素晴らしいなあと思います。

 

結果はN.D.でした。

 

サメやエイなどの軟骨魚類は硬骨魚類に比べて放射性セシウムの排出が遅く濃度が高くなります。しかし、アブラツノザメは普段はあまり汚染されていない深い海に生息するので、測定してもN.D.になったとのこと。

 

これもめっちゃ大事です。「サメ」と一括りにしないで、どういう生態なのか、どこに棲んでいるのか、どこでエサを食べるのか、そのエサは何なのか。そんなことを詳しく知ることで、現在の海の状況をさらに詳しく見ていくことができるんですね。

 

すばらしい!!!!

 

 

―そして今回の試食へ

 

そして恒例の試食タイム。今回は、水揚げの都合が悪くいわき市産が用意できず、苦渋の決断ではありましたが、宮城県のカツオを使った「カツオの漬け」と、北海道のホッキ貝を使用した「ほっきめし」でございます。いずれも浜通りでは当たり前の食ですね。素材は他県産ですが、料理は地元。

 

おいしそうな写真の載せておきますので、皆さんで「ぐぬぬ」してくださいませ。

 

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カツオの漬け(づけ)。刺身が続くと飽きますからね。さっぱりして非常にうまいです

 

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カツオの漬け(づけ)。刺身が続くと飽きますからね。さっぱりして非常にうまいです

 

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だしで炊き上げた白飯に、ブリッブリのホッキを豪快に混ぜ込む。よだれしか出ない

 

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ホッキの風味が口一杯に広がります。そしてジューシー。3杯くらいいけますね

 

 

 

―改めて伝えたい、調べラボの素晴らしさ

 

いやあ、これだけ充実したプログラム、さすがは水族館だなと。水族館の入場料は払わないと入れませんが、調べラボ終わったら普通に中を観覧すれば充分、充分元はとれますし、何より学びの量がハンパではない。

 

①放射性物質の計測プロセスを間近で見られる。
②なぜ高いか、なぜ低いかの根拠を直接聞ける。
③なんならほかの魚について詳しく学べる。
④しかも試食が料亭レベルでうまい。
⑤水族館自体の入場料はかかるけど調べラボは無料。

 

いやあ、素晴らしいイベントです。

 

次回は8月23日の予定です。ぜひご家族でいらしてください!!!

 

なお「うみラボ」は8月9日に行います。ツイッターやフェイスブックで調査同行者を若干名募るかもしれません。希望する方はそちらで。

小松けんきゅう員
小松けんきゅう員

うみラボけんきゅう員。釣るよりも食べるほうの専門。