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第12回調べラボ「人生色々、メバルもいろいろ」 – いわき海洋調べ隊「うみラボ」公式サイト
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第12回調べラボ「人生色々、メバルもいろいろ」

皆さんこんにちは、うみラボけんきゅう員の小松理虔です。5月15日日曜日、アクアマリンふくしまで「調べラボ」が開催されました。今回計測した魚は、5月初旬の海洋調査(爆釣)で釣り上げたサンプルになります。メバル類を中心にマサバなどの青物も釣れました。調べラボの開催時間内に計測できなかったものも前もって計測して頂いておりましたので、そちらの結果も合わせてご案内いたします。

 

さて今回の調べラボの目玉食材がこちら「いわき産マガレイ」を使った、「マガレイの唐揚げ甘酢あんかけ」でございます。

 

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アクアマリンふくしまのシェフの調理により、外はカリカリ、中はふわっとジューシー、マガレイのほのかな甘みと旨味を閉じ込めつつ、外側からは甘酸っぱいあんがほわほわっとかけられ、水族館の測定イベントにいることを忘れてしまいました。これ、ちょっとしたオシャレなダイニングバーで、さらにオシャレな皿の上に載ってたら1,000円くらいしてもおかしくねえんじゃねって感じの。

 

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調べラボ会場で、あんをかけられるのを今か今かと待つマガレイたち。香ばしい香りが部屋中に充満しておりましたぞ。マガレイは揚げると本来の味と食感がかなり膨らみますね。覚えておかねば。

 

 

―キッズ大集合の調べラボ

 

さて、肝心の測定ですが、今回の調べラボでは、原発事故直後から「高線量」の魚として知られていた「メバル」類の計測になります。前回の海洋調査で、かなりこのメバル類を釣ることができまして、同じメバル類でも違うんだぜ? ということがわかれば興味深いね、ということで富原獣医の発案で、このようにメバル中心の調べラボとなりました。

 

イベントの模様を写真でざっくりと振り返ります。

 

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調べラボは毎回この1階奥の「アクアルーム」で開かれています。今回からこの立て看板のデザインが新しくなりましたね。調べラボにいらっしゃる方、この看板を目印に、入り口を入ったらまっすぐ奥までお進み下さいませ。

 

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今回の調べラボ、とにかく魚好きのキッズたちがたくさん見に来てくれたのがお父さんたちはうれしかった。この「楽しみながら食育」というのはアクアマリンふくしまの特徴だと思いますが、こうして実際に子どもたちが目を輝かせながら魚を学んでいく様を見ると、うれしくなります。福島の海は、君たちに任せたぞ!

 

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多くの子どもたちにとって興味があるのは、「放射性物質の計測」ではなく「魚の解体」。しかしその解体を見ることで、魚の体の器官や、耳石など放射性物質の計測には欠かすことのできない部位の存在などを知ることができるわけですね。魚の色々なことに興味を持つ。そこから少しずつ科学的な見方が生まれ、食の安全などについて「自分で考え、自分で選択する」ということにつながっていきます。

 

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たまたま見かけたのですが、このカワウソのクラフト帽子はかわいいです。今回から新登場らしいので、お子さん連れでアクアマリン行ったらぜひこれ作ってみて下さい。アクアルームのすぐそばのブースで作れまっせ!

 

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試食の味付けは子どもたちにも大人気。「お魚離れ」なんて言われていますけれども、魚はうまい。「おさかなおいしいね」と言ってもらえる機会を、私たちうみラボも少しずつ作っていかないとなあと、子どもたちの顔を見ていると感じます。

 

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さてさて今回の調べラボには、いわきの観光大使「サンシャインガイドいわき」に内定したという3人の女性たちが勉強を兼ねていらっしゃいました。美女の到来にうみラボメンバーも浮き足立ちまして、なんとか部員にと積極的に勧誘しましたが、積極的にアピールするほど女性たちも引いた表情をしてらっしゃいました。うみラボ女子部員誕生の機会を逸した模様です。

 

※うみラボでは「女子部員」募集中です!

 

 

―放射性物質の計測結果

 

で、今回の計測結果です。先に結論を載せておきます。

 

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今回の調べラボで計測した(5月15日計測)ものが海底土、シロメバル、ウスメバル、キツネメバル、クロソイになります。しかし、採取した魚の量の多すぎて、この日だけでは測ることができませんでしたので、すでに前もって(5月2日)計測してあります。それらの結果をまとめて発表しますが、いずれも5月1日の海洋調査で採取した魚であることは変わりません。

 

試料①海底土(福島第一原発沖1.5km)

 

かいていど

 

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計測結果
Cs 137 47.5Bq/kg
Cs 134 11.2Bq/kg
Cs合計 58.7Bq/kg

 

富原獣医コメント:原発前の海域の海底は砂地(珪砂)ですので粘土鉱物も少なく、放射性セシウムが吸着しにくいため、原発沖の海底土でも内湾の泥に比べて低い値となります。今回の数値だと東京湾に注ぐ川の河口の泥よりも低いんじゃないでしょうか? また、毎度のことですが検査結果では放射性ヨウ素が検出されていますが、アクアマリンふくしまの測定器は土壌中の放射性鉛を放射性ヨウ素と誤検出しやすいNaI(Tl)シンチレーションスペクトロメータですので、土壌中に含まれる天然核種である放射性鉛を誤検出したものです。放射性ヨウ素かどうかの判定は同じ試料を2週間ほど置いてから測定すればわかります。放射性ヨウ素の半減期は8日ですので放射性ヨウ素だった場合は数値が低くなります。

 

 

試料② シロメバル(原発沖10km/4個体 平均27.3cm)
試料③ シロメバル(原発沖10km/4個体 平均27.3cm)

 

siromebaru1

 

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試料②の計測結果
Cs 137 N.D.
Cs 134 N.D.
Cs合計 N.D.

 

試料③の計測結果
Cs 137 6.53Bq/kg
Cs 134 N.D.
CS合計 6.53Bq.kg

 

うみラボの評価:昨年は計測すればほぼ検出はされていたメバルですが、今回のメバルは非常に低い結果となりました。採取したのが10km沖ですのでこのような結果になったわけですが、沖で線量の高いメバルを探すのは難しそうです。富原先生によると、原発近傍の海も、海底は線量の低い砂地であり魚礁が少ないので、近傍だとしても数値の高いメバルを釣るのは難しくなるのではないか、とのこと。8歳を超えるような年齢の個体でなければ、高い線量を検出するようなメバルは出て来ないかもしれません。

 

富原獣医コメント:試料③は、耳石を見ると7歳、8歳、8歳、9歳とすべて事故前生まれの個体でした。原発沖10kmの海域でも5年も経つとこれくらい放射線量が下がっています。そろそろ、10km圏外の魚はすべて解禁でも問題ないでしょうね。

 

 

試料④ウスメバル(原発沖10km/5個体 平均30.0cm)

 

ウスメバル

スクリーンショット(2016-05-16 12.02.30)

 

計測結果
Cs合計 N.D.
富原獣医コメント:シロメバルに比べて沖合に生息するので、シロメバルほど汚染されていません。シロメバルよりも成長が早く、代謝も早いためか、うみラボの調査では低い値です。今回の個体は3〜4歳でしたので事故後生まれということもあって、N.D.となりました。

 

 

試料⑤キツネメバル(原発沖10km/4検体 平均34.8cm)
試料⑥キツネメバル(原発沖10km/6検体 平均30.1cm)

 

マゾイ

スクリーンショット(2016-05-16 12.02.03) スクリーンショット(2016-05-16 12.03.47)

 

試料⑤の計測結果
Cs 137 8.56Bq/kg
Cs 134 N.D.
Cs合計 8.56Bq/kg

 

試料⑥の計測結果
CS合計 N.D.

 

富原獣医コメント:耳石から判断すると6〜8歳でした。8歳魚が混ざっていたためか少し放射性セシウムが検出されました。シロメバル同様、長生きする魚ですので、まだまだ原発事故前の個体がいる状況ですが、事故から5年経った現在は排出が進んで、今回の結果のような低い数値になると思われます。汚染された当初は数十万Bq/kgはあったかもしれません。

 

 

試料⑦クロソイ(原発沖10km/2個体 平均全長42.8cm)

 

クロソイ

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計測結果
Cs合計 N.D.
富原獣医コメント:キツネメバルよりも大きい個体ですがクロソイは成長が早いため、今回の個体は事故後生まれの4〜5歳です。結果はN.D.です。成長が早いということは代謝も早いので、取り込んだセシウムもキツネメバルやシロメバルよりも早く排出されると思われます。事故前生まれのクロソイでも放射性セシウムが検出されにくいのはそのためでしょうね。

 

 

試料⑧アイナメ(原発沖2km/3個体 平均全長33.4cm)
試料⑨アイナメ(原発沖2km/3個体 平均全長34.3cm)
試料⑩アイナメ(原発沖10km/2個体 平均全長41.1cm)
試料⑪アイナメ(原発沖10km/1個体 全長46.5cm)

 

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試料⑧の測定結果
Cs 137 8.58Bq/kg
Cs 134 N.D.
Cs合計 8.58Bq/kg

 

試料⑨の測定結果
Cs合計 N.D.

 

試料⑩の測定結果
Cs合計 N.D.

 

試料⑪の測定結果
Cs合計 N.D.

 

富原獣医コメント:⑧については、体長から考察すると2歳のアイナメです。アイナメは大型個体のほうが汚染が認められやすかったのですが、現在の原発前の海洋条件では、小型のものほど放射性セシウムが検出されやすくなっています。これは、小型の個体ほど沿岸寄りの浅い海域に生息するためだと思われます。汚染水の海洋流出を防ぐ遮水壁がうまく機能すれば、この小型のアイナメもN.D.になるのではないでしょうか。N.D.でした。アイナメはシロメバル同様に底魚ですが、成長も早く世代個体が進んでいるため原発事故前生まれの個体はなかなか見つけられなくなっています。今後も注目していきたい魚です。

 

 

試料⑫マサバ(原発沖2km&10km/6個体 平均33.0cm)

 

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計測結果
Cs合計 N.D.
富原獣医コメント:うみラボの検査では初めてのマサバです。南方系回遊魚のマサバなので結果はN.D.です。今年は大型のマサバが福島県に回遊してきているようで、小名浜周辺の釣り場でちらほら釣獲情報が聞こえてきます。南方系回遊魚なので黒潮の影響を大きく受けるので毎年、釣果が違う魚です。この数年は小名浜港ではあまり良い話を聞かなかったのですが、今年はマサバの当たり年になるかもしれません。

 

なに!  マジですか! 祈マサバ豊漁!!!

 

 

試料⑬マダラ(原発沖10km/全長64.5cm)

 

madara

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測定結果
Cs合計 N.D.
富原獣医コメント:水温の低い冬の間は沿岸で釣れていましたが、そろそろ北に移動するマダラです。今回釣獲されたマダラは大きさから4〜5歳と推定されます。マダラは大食漢で事故直後は汚染された魚をたくさん食べ、比較的高い放射性セシウムが検出されましたが、成長が早く、代謝も早いため、事故前生まれの大型マダラでも現在はほとんど汚染が残っておりません。ただ、回遊する魚なので、原発の極近海で汚染された魚を食べたり、周辺より少し汚染度の高い海水に触れる可能性がある魚なので、事故後生まれの個体でも放射性セシウムは検出されることが稀にあるようです。しかし、事故直後のような食品の基準(100Bq/kg)を大きく超えるような個体はもう居ないと思われます。

 

いかがでしたでしょうか。今回は、10km沖とはいえ、震災前生まれのメバルがN.D.という結果になり、希望の持てる調査となりました。これまでですと、震災前生まれで、しかも7歳以上のメバルは比較的線量が出る傾向でしたが、沖のほうにいる個体はかなり排出が進んでいるものとみられます。

 

また、アイナメも線量が下がってきましたね。アイナメは若く体が小さい個体が浅い海域にいるため、現在の海域の影響を受けやすいことで知られています。原発近傍の小さめのアイナメからは、今回は8ベクレルが検出されていますが、もう片方はN.D.ですし、こちらもかなり下がってきている印象です。継続して調べてみたいと思います。

 

さて、次回調べラボですが、6月19日を予定しています。ぜひ皆さんお越し下さい!

小松けんきゅう員
小松けんきゅう員

うみラボけんきゅう員。釣るよりも食べるほうの専門。