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第13回調べラボ「クロソイアイナメ天国」 – いわき海洋調べ隊「うみラボ」公式サイト
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第13回調べラボ「クロソイアイナメ天国」

みなさんこんばんは。うみラボけんきゅう員の小松です。

 

ちょっと時間が空いてしまいましたが、6月19日日曜日、アクアマリンふくしまで開催されました「調べラボ」の模様をお伝えしたいと思います。今回はなんといっても前回のうみラボで釣り上げた巨大クロソイ、そしてアイナメちゃんたちなど、測ってみたい検体が満載。さらには今回の試食は「ホッキめし」と「アサリ汁」の2種類ということで、テンションが激しく上がって参ります。

 

まずは試験操業の魚の試食です。今回の特選素材その1が、いわき市四倉産のホッキ貝。これでホッキめしを作ってございます。そして特選素材その2が相馬市松川浦産のアサリを使ったアサリ汁。おいしくないはずがありません。ホッキはもっちもちでジューシー。ああ、刺身も食いたかったなと思わずにいられませんでした。そしてアサリが至極。まさに至極でした。

 

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下の写真、見てみてくださいよ。左が一般的なサイズのアサリ。右側が今回の試食で使われた松川浦産のアサリ。大きさが違う!  これまで漁の自粛が続いてきたせいで、漁はできなかったものの、アサリは漁獲されることなくデっかく育ったわけです。素晴らしいじゃないですか。味はもう素晴らしいのなんの。ハッキリ言いますが、人生で一番うまいアサリ汁でした。ダシが濃厚で爽やか。後味も申し分ありません。前の日に酒を飲んでいたうみラボのぴっぽ隊員は昇天してました。

 

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地元の最高級品を惜しげもなくつぎ込み、アクアマリンふくしまのレストランのシェフが丁寧に調理した「最高級ハマ料理」ですよ。それが無料で食べられ、場合によってはおかわりもできるってんですから、そんなイベントどこを探してもありません。アクアマリンふくしまの入場料金の元が取れると言っても言い過ぎではありません。だってこれだけでじゃなくて、サイエンスカフェ的な「学びの場」も提供されるわけですから。改めて、すごいイベントだなと思います。

 

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阿部館長もおいしそうにアサリ汁を楽しんでらっしゃった

 

 

では当日の模様を振り返って参りましょう。この日測定したのは、6月の初旬に行われた「うみラボ いちえふ沖海洋調査」で採取された海底土や魚たちです。当日は時間の関係で数種類のみを測定しますが、採取したサンプルはかなりの数に上っているので、事前に、あるいは調べラボ後に、アクアマリンふくしまの富原獣医を中心に、魚の放射線量を測定して頂いています。

 

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試食に舌鼓を打つ参加者たち。福島の魚の美味さに衝撃を受けたに違いない。

 

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線量を測定した巨大クロソイ。ソイはよくダシが出る。鍋にぶっ込んで頂きたい

 

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調べラボの人気コーナー「ヒラメの解体」。富原獣医が慣れた手つきで5枚おろしに

 

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参加者、と思ったら胸にロゴがあるので水族館のスタッフの方でしょうかね。関係者がこれだけ食いつく調べラボすごい

 

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テレビ局の収録が入り、魚の捌き方を女子アナに伝授する富原獣医。普段は見られない優しい手つきでレクチャー

 

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小さな子どもたちを持つお母さんたちの姿も。気になることがあれば、専門家に確認することができるのも、調べラボの特徴

 

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放射性物質の数値には、皆さん高い関心を示すが、現在は実際のところあまり検出されなくなってきている

 

調べラボの特徴は、やはり面白く楽しく、そしてためになることですね。五感に訴えかける試食と、理性的な部分に訴えかける科学的な知見。この両方が同時に体験できるというのは、福島県内でも珍しいのではないでしょうか。試食は試食、科学は科学、というように分けられてしまいますから。でも調べラボはそれが曖昧なのがよい。試食をして「おいしかった」で終わってもよし。富原せんせいに話を聞いて「納得できた」で終わってもよし。とても懐の深い企画なんです。ぜひ皆さん、一度遊びにいらしてください。

 

では、放射線量測定の結果をお知らせします。今回は検体が18と多いのですが、頑張って投稿しますので是非最後までご覧下さい。まずはすべてのデータをまとめてありますのでそちらを。

 

スクリーンショット(2016-06-29 21.08.46)

下にはそれぞれの検査結果表の画像を添付してあります。下の画像をクリックするとPDFファイルですべての検査結果画像が見られます。試しにクリックしてみて下さい。かなりたくさんのデータが出てきます。うみラボ、ちゃんとやってるんだなと納得頂けるかと思います。だからクリックしてみて下さい。

 

スクリーンショット(2016-06-29 16.31.18)

 

※海底土から放射性ヨウ素が検出されていますが、アクアマリンふくしまの測定器は土壌中の放射性鉛を放射性ヨウ素と誤検出しやすいNaI(Tl) シンチレーションスペクトロメータですので、土壌中に含まれる天然核種である放射性鉛を誤検出したものです。放射性ヨウ素かどうかの判定は同じ試料を2週間ほど置いてから測定すればわかります。放射性ヨウ素の半減期は8日ですので放射性ヨウ素だった場合は数値が低くなります。

 

さて、今回の調査結果で気になるところ、まずは2つでしょうか。

 

①10km沖のクロソイから比較的高めの30Bq/kg台の放射性セシウムが検出された。
②原発沖2kmという直近にも関わらずアイナメがあらかたN.D.になった。

 

この2つです。

 

くろそい

 

まずはクロソイです。富原獣医に耳石を鑑定してもらうと6歳とのこと。6歳魚だと事故前生まれではあるものの、事故当時は若齢魚で代謝も早く、すでに放射性セシウムは残っていない個体が多いのですが、今回は若干高い値です。富原獣医によると「事故当初に取り込んだ放射性セシウムが膨大だった可能性がある」とのこと。個体差があるので仕方ないかもしれません。さらに「同じ場所で釣れた6歳の2個体は9.64Bq/kg8.56Bq/kg5歳の2個体はN.D.であるため、クロソイの場合5歳魚(2011年生まれ)だとN.D.になるのかな? という印象です」と。

 

ううむ。これは興味深い結果となりました。同じ場所で、同じ年齢の魚が釣れた場合どのような結果の違いが生まれるのか、今後は詳しく調べなければならなそうです。2011年生まれなら出ないけど、2010年生まれだと出てくる。なるほどなるほど。

 

あいなめ

 

続いてアイナメはどうでしょうか。今回は、2kmのアイナメ1試料だけ検出という結果。アイナメはですね、他の魚と違って小型のものほど放射性セシウムが検出されることが過去の調査からわかっています。大型になると水深の深い沖のほうへ移動するからだそうです。このため、1〜2歳と年齢が若く沿岸にいるアイナメから放射性セシウムが検出されやすかったんですね。

 

ですが今回は非常に低い。これは原発の遮水壁などの対策が進んできていることの証左でしょうか。富原先生からも「アイナメは現在の原発沖の海洋状況を最も反映している魚ではないでしょうか。遮水壁などの対策が進めば小型のアイナメも検出できなくなるでしょうから、注意深く見ていきたい魚です」とコメントを頂いています。ますます小型のアイナメを釣っていく必要があるようですね。

 

そして、今回は原発沖2kmのヒラメが両方検出下限値未満ということで、素晴らしい結果となりました。ヒラメはようやく出荷規制が解除になっています。うみラボ調査でも多くの個体がN.D.になっていました。もっと早くても良かったかなとも思いますが、慎重に慎重を重ねた結果でしょうから、まずはヒラメの解禁を喜びたいと思います。

 

富原せんせいからも、以下のようなコメント頂きました。「釣り人的には漁が始まると今までのように、たくさんは釣れなくなるのかどうか気になりますね。アクアマリンふくしまの目の前の堤防でも昨年の夏は大きなヒラメが連日、釣れていましたので、堤防からヒラメが釣りたい方は今年の最後のチャンスを狙って小名浜に釣りに来てみてはいかがでしょうか?」。なるほど。

 

いつヒラメ釣るの。今でしょ。

 

さて、その他のマナマコですが、ナマコやヒトデ、貝類は無脊椎動物で、魚とは浸透圧調整の機構が違いため放射性セシウムは蓄積しにくいと以前学びました。これは納得です。検出されたシロメバルも、富原せんせいに耳石を鑑定頂くと、なんと9〜10歳の個体だったそうです。震災前生まれの個体が入っていると、やはりN.D.というわけにもいきません。納得できる結果ですね。

 

というわけで、今回のレポートはこんなところです。「クロソイの5歳か6歳か問題」、「浅場アイナメ見れば汚染水対策が読み取れる問題」。非常に興味深いですね。次のうみラボでも、頑張って狙いを定めたいと思います。ではでは。またこのブログでお会いしましょう。

 

 

 

 

小松けんきゅう員
小松けんきゅう員

うみラボけんきゅう員。釣るよりも食べるほうの専門。