第16回調べラボ「ブリヒラマサ問題」
みなさんこんばんは、うみラボけんきゅう員の小松です。ここのところ仕事が忙しすぎて(言い訳)更新が遅れ遅れになっておりますけれども、今回は9月18日ですかね、アクアマリンふくしまで開催された16回目の調べラボについて取り上げたいと思います。しばしお付き合い下さい。
さて、まずは特選素材のご紹介。調べラボでは毎回、試験操業の魚などを使った「試食」を振る舞って頂いております。毎回ですね、最高級食材を用意して頂いておりまして、さらに、具材の盛りつけも「異常」といっていい大盤振る舞い。すっかり調べラボの名物になっているわけですが、今回は「戻りガツオ」です。福島県産が手に入らなかったということで岩手県大船渡産のカツオです。
今回はそれをヅケにしたものを頂きました(写真上)。戻りガツオというのは「脂」がやはり違う。ノリが違うんですね。さっぱりしたカツオも美味いと思いますが、戻りガツオの「トロ」なんてあんた、食った日にはよだれで脱水症状起こすくらいうまいですよ。
それを醤油ベースのヅケにしちゃうってんだから、ご飯が合わないわけがありません。チクショー白飯食いたい! と思ったら、アクアマリンのレストランで白飯だけ買って来た人がいたとかいないとか(次回からそれ頂きます)。
ささ、おいしく試食を頂いたところで、ラボです。
さっそく、放射性物質の計測結果に行きたいところですが、そうじゃない。まずは魚についての「雑学」をまずは知ってから線量測定だ、というのが調べラボの醍醐味。以前にはマコガレイとマガレイの違いについて学んだこともありましたが、さああああ今回は、これだ!
ブリとヒラマサ、どこがどう違うのか!
さて皆さん、下の写真、どちらが「ブリ」で、どちらが「ヒラマサ」でしょうか。
は? 何言ってんの? 同じ魚じゃん!
って感じですよね。はい、おれもようわかりません、が、別の魚なんですね。
ブリもヒラマサも高級魚ですし、両方うまい魚ですし、ほとんど見た目も同じ。ううむ。両方回遊魚だし、両方「アジ科」の魚ですし。ただ、ブリの旬は脂の乗る「冬」であるのに対し、ヒラマサは「夏」。ヒラマサはそんなに脂っこい魚じゃないですしね。そのくらいの違いしかわかりません。
というわけで、アクアマリンふくしま富原獣医の解説であります。
へええええええ! そうなんだ、たしかに口の角の形が違う!!! でもほとんど同じじゃん(暴論)。いやあでも、違う魚なんで、ここはしっかり違いを学んでおきましょう。富原先生の解説に従って写真を見てみると、こういうことですかね?
☝ブリ ☝ヒラマサ
いやあ、これは大したことない違いのように見えて、とても大事です。だって別の魚なんですから。このあたりの「トリビア」を知っていくことで、より海との距離感が縮まり、しいては、福島の海を理解することに繫がります。見た目同じじゃんって言ってたら、何でもよくなっちゃいます。神は細部に宿るのです(違)!
さあ、ブリとヒラマサの違いがわかったところで、線量測定の結果です。今回は、うみラボ調査が爆釣だったので、調べラボ当日以外に、まとめて検体の測定をして頂きました。その結果も含めてのデータとなりますことを、あらかじめ断っておきます。もちろん、検体はすべて、9月4日の「うみラボ」で釣り上げた魚です。
※この図の画像をクリックすると、すべての計測結果をまとめたpdfファイルが開きます。詳しく知りたい方はクリックしてみて下さい。
まず今回特徴的だったのは、ヒラメが爆釣だったことですね。21試料中15試料がヒラメですよ。さらに70cmオーバーのヒラメが2試料入ってます。うみラボの釣り能力の高さを伺い知るデータになっていますね。
冗談はそのくらいにして、試験操業の始まったヒラメ、この通り、ほとんど出ていません。70cm級、震災前生まれと思われる個体のうち、2つから検出されていますが、漁協の基準値50Bq/kgを大幅に下回るデータです。試験操業開始の妥当性を裏付けるデータになっているのではないかと思います。富原せんせいからも「今回のデータで、試験操業も安心できるのではないか」とのこと。まさにそのようなデータになりました。早く常磐のヒラメ食べたいですね。
さらにアイナメを見てみますと、試料No.6の47.1cmのほうを見てみて下さい。かなり大型です。富原せんせいに耳石を鑑定して頂くと8歳とのころ。おおおお、アイナメでそんなに長生きする個体があるんですね。ところが結果はN.D.です。富原せんせいは「あまり移動しないアイナメで8歳の事故前生まれの個体がN.D.というのは喜ばしいことです」とのこと。うむ。アイナメもここのところかなり線量が下がってきました。原発近傍でなければ試験操業の対象として考えても良いかもしれませんね。
ブリですが、まあ回遊魚ですので、セシウムは当然のように不検出でした。
今回、9月うみラボ&調べラボは、試験操業が始まったヒラメは本当に大丈夫か、ということがテーマでした。ご覧のように、ヒラメの試験操業開始は「妥当」な判断だったのではないかと考えられます。もちろん、生き物ですから万が一にも基準値を超えるようなものが流通したのでは問題ですから、継続したモニタリング調査を行って頂きたいところですが、原発事故から5年半あまりで、ヒラメがこれほどまでに回復してきているという事実。それは理解頂けたかなと思います。
あとはお茶の間向けに、それなりの価格で魚屋の店頭に並ぶようになるといいな、というところですが、常磐のヒラメですからね、築地でガシガシ売れて「常磐もの」復活のための起爆剤になってもらいたいと思います。
それでは今回はこのあたりで。