第17回調べラボ「木戸川の飲むイクラ復活」
皆さんこんにちは、うみラボけんきゅう員の小松です。最近はサンマ推しです。
さて皆さん、10月16日に開催されたアクアマリンふくしま「調べラボ」について振り返って参ります。今回の見どころは、何はともあれ木戸川のサケです。今年も漁が行われておりますよ。その木戸川のサケをたっぷりと使った紅葉汁と、ご存知「飲むイクラ」が振る舞われました。そして、線量測定。今回はヒラメ、メバルなどを計測しまして、今回も新たな知見が得られております。そのあたりに注目して、最後までご覧下さい。
最近の調べラボの傾向として、①特選素材を味わう、②魚トリビアを学ぶ、③線量測定、この3つがコンテンツになってきました。以前は、試食と測定がメインだったのですが、何か1つの魚をとりあげて、その魚について学ぶことが何より大事。福島の線量、海の汚染云々ももちろん大事ですが、魚についてのそもそもの知識を増やすことも、消費者として大事な姿勢であると私たちは考えます。
福島の海の現状を知ることが、日常を豊かにすることに繫がらなければ意味がありません。汚染の状況だ、セシウムだトリチウムだ、ということを学ぶことはとても大事ですが、そこに「楽しい」や「面白い」、「ためになる」をプラスして行かなければ、それらの問題をより日常化させることはできません。魚を知ることを通じて日々の生活が楽しく、そしておいしくなり、そしてそのついでに、福島の海についての情報がアップデートできる。そのようなあり方が重要なのだと思います。そのほうがサステナブルなんだと思うんです!
はい。マジメな話はそれくらいにして、特選素材の紹介です。
ジャーン!
木戸川さんのシロザケを使った紅葉汁と、イクラ!
つーか誰だよ勝手に「イクラ丼」にしてるやつはwwww!!!
前回の試食はカツオのヅケだったんですが、どうも前回から「アクアマリンのレストランで白飯をゲットして特選素材を乗せて丼にする」っていう新しい食べ方が始まったようで、今回も丼にする猛者が出現。いやー、そりゃそうだよ、飲むイクラもおいしけど、飲んでおいしいイクラが、ご飯にかけてマズいわけがない。そりゃあご飯と食べたいですよね。
と思ったら、、、、丼がっついてるのは、うみラボの八木隊員でした。
うみラボメンバーが誰よりも「調べラボ」を楽しんでいると言うのがですね、はい、ミソです。だって「やらされる」のだけはイヤですし、こうして魚のことを知れて、おいしいものを食べられて、そして学びも得られて、最高じゃないですか。もちろん接客対応的なこともしますし、これまでの調査についての解説などもすることもありますが、やはり楽しんでこそのうみラボ&調べラボなのです!
神々しささえ漂うイクラ。これを紙コップに注いで飲む!
飲むイクラを体内に取り込んだところで、今日の魚トリビアは、木戸川のサケについての雑学でした。オスとメスの見分け方や、サケがどのように木戸川に戻って来るのか、そしてなぜ木戸川のサケの肉は、ぼくたちの想像する「赤」っぽい身ではないのか、というかそもそも鮭の肉ってなんで赤くなるのか、そのようなことから、富原せんせいと吉田せんせいからレクチャーを受けていきます。
学んだことはすぐにツイート! 遠方の皆さんとも情報のやり取りに余念のない八木隊員。
口の形の違いなど、オスとメスの見分けの付け方を学んでいきます。
実際に現物を見ながら学べるので「理解度」が格段に違うのが調べラボ。ちなみに口角の形からこいつぁオスですね!
基本中の基本ですが、サケって魚は、実は白身魚なんです。
白身魚なんだけど、エビやカニなどの甲殻類を食べて成長するので、その色素が筋肉に取り込まれ、それで身が赤くなるんですね。アスタキサンチンという色素で、昨今、この色素の健康効果なども評価されてるようです。だいたいね、川で生まれて海を泳いで、そしてその川に戻ってくるだけの「体力」がッサケにはあるわけで、この色素の抗酸化作用がサケの抜群の体力に関係しているという話もある。ちなみに、富士フイルムが基礎化粧品として販売してる『アスタリフト』って化粧品も、アスタキサンチンの持つ紫外線からの防御機能を利用したものだとか(オレ調べ)。
いやあ、サケって素晴らしい。そしてその素晴らしいサケの名産地がこの福島にもあるわけです。すでにうみラボの八木隊員たちが、木戸川のサケ漁などを視察する別働隊を組んで視察しているようです。こうして地元の宝を頭でも目でも舌でも知っていくこと、大事ですね。
さて、続いては線量測定です。
今回は測定するのは、10月の頭に行われた第19回いちえふ沖調査で釣り上げた魚になります。調査の模様はコチラからご覧頂けます。かなり検体数もありましたので、まずはすべてのデータの一覧をご覧ください。ファイルの画像をクリックすると、個体別の測定データのPDFファイルがご覧頂けます。
まず今回のデータで興味深いのが、やはりメバルに放射性セシウムが検出されたものの、値は漁協の自主基準50Bq/kgを大きく下回るデータだったことです。このほか、71cmと大型のヒラメからも微量ですが放射性セシウムが検出されました。
まずメバル類から見ていきましょう。
キツネメバル(写真左)の耳石を富原せんせいに査定して頂くと、結果は7歳と9歳の個体でした。原発近傍の2km沖で採取され、しかも震災前生まれの高齢魚ですので、現在でもこれぐらいの汚染が残っていることがあるということがわかります。
さらにシロメバル(写真右)も、同様に耳石鑑定をして頂くと、それぞれ7歳、8歳、9歳であることがわかりました。先ほどのキツネメバル同様、2km沖で採取された震災前生まれの高齢魚ということになります。富原せんせいも「原発の港内の魚を除いて、一番高い汚染が残っている沖2kmのシロメバルとキツネメバルの高齢魚では現在はこれぐらいの数値だとわかったことはよいサンプリングになったと思います」とのこと。
今現在、最も線量が高い傾向にある「原発近傍で採取される震災前生まれのメバル類」ですらも、20Bq/kg程度にまでなってきているということです。もちろん「依然として検出される」とも取れますが、震災直後に数千ベクレル級の線量が検出された魚種ですらも、漁協の自主基準をかなり下回るデータになってきているんですね。
この事実のみをもってしても、福島の原発沖の海洋汚染、とりわけ魚介類の汚染について「相当回復している」という事実が理解できるかと思います。もちろん、メバルは現在も出荷規制がかかっており流通はしていませんが、そのような魚ですら、ここまで回復してきているということになろうかと思います。おととしなんて、震災前のメバルは100Bq/kg超えてたんですから。
続いてガザミ(ワタリガニ)です。
まあ甲殻類はセシウムを溜めにくいとすでに我々は学んでますから、これがN.D.なのは超絶納得がいっております。ちなみにこのガザミ、交尾中だったのを、八木隊員が無理矢理釣り上げたものでした。
富原せんせいからは、以下のようなコメントが来ております。
八木さんが夫婦の営み中にすくったガザミ(ワタリガニ)です。きっと彼は馬に蹴られて死んでしまうでしょうが、馬好きの彼からしてみれば本望かもしれません。乾燥粉末にして検出限界を下げて測定しましたが不検出となりました。甲殻類は放射性セシウムを蓄積しにくいので原発沖に泳いでいるカニでも汚染は見つかりません。
はい。そうですね、八木さんは馬に蹴られて死んで・・・・!!!!!
いやいや、これ富原せんせいのコメントですからねっ! それにしても交尾中のガザミにとっては災難でしかなかったと思いますが、しかたありません、しっかり測定し、我々の脳の肥やしにさせてもらいました。ガザミよ、許せ!!
このほか、ブリは回遊魚ですから検出されませんし、アイナメも、ここのところかなり下がってきていてほとんど検出されなくなりましたね。富原せんせいに耳石を鑑定してもらいましたが、5〜6歳と、震災前生まれである可能性もあるようですが、このような個体も「不検出」ですから、つまり相当線量は下がってきているということです。ここまで来ると、福島県沖の魚について「汚染」という言葉を使うのが相応しいのかビミョーになってきますね。
さて、次回の調べラボは11月20日になります。どんな特選素材が登場するのか! ぜひご期待下さい!!